印する(読み)インスル

デジタル大辞泉 「印する」の意味・読み・例文・類語

いん・する【印する】

[動サ変][文]いん・す[サ変]
いんや型を押す。「契約書に―・する」
しるしを残す。跡をつける。また、しるしが残る。「未踏の地に第一歩を―・する」
わだちの跡は深く軟かい路に―・して」〈花袋春潮
影や光を他の物の上に届かせる。また、影や光が物の上に現れる。
赤土の上に網のような模様を―・している」〈鴎外灰燼
「月の光はくっきりと地に―・して」〈独歩少年悲哀
強い印象を与える。
「此時ほど我心に…、意味ありげなる趣を―・したことはない」〈独歩悪魔

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精選版 日本国語大辞典 「印する」の意味・読み・例文・類語

いん‐・する【印】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]いん・す 〘 他動詞 サ行変 〙 ( 古くは「いんず」とも )
    1. 印や型を押す。
      1. [初出の実例]「一行の雁や端山に月を印す」(出典:俳諧・蕪村句集(1784)秋)
      2. [その他の文献]〔旧唐書‐職官志・三〕
    2. ある力などを加えたしるしを残す。あとをつける。
      1. [初出の実例]「剃髪染衣すれば、たとひ不持戒なれども無上大涅槃の印のために印せらるるなり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)出家功徳)
      2. 「吾が顔に印せられる痘痕の銘」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉九)
      3. [その他の文献]〔薛昭薀‐浣渓沙詞〕
    3. 物の影や光などを他の物の上に投げかける。また、人の心に強い印象を与える。
      1. [初出の実例]「此時ほど我心に其清くして澄たる、意味ありげなる趣を印(イン)したことはないからである」(出典:悪魔(1903)〈国木田独歩〉五)
      2. [その他の文献]〔范成大‐丙戌登姑蘇台詩〕
    4. 教えなどを人に強く吹きこむ。
      1. [初出の実例]「一代聖教之外仏印迦葉此法」(出典:日蓮遺文‐守護国家論(1259))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]いん・す 〘 自動詞 サ行変 〙
    1. ある力の加わったしるしが残る。あとがつく。
      1. [初出の実例]「屐をはいて遊だあとが苔に印して有ぞ」(出典:四河入海(17C前)八)
    2. 物の影や光が他の物の上に現われる。
      1. [初出の実例]「カイヅは隊をなして〈略〉水を游(およ)げば、其影ちらちらと底に印(イン)せり」(出典:自然と人生(1900)〈徳富蘆花〉湘南雑筆)
    3. 仏語。師と弟子の心が一致する。会得開悟する。
      1. [初出の実例]「高野大師嘗印禅宗曰、以西天仏心東土仏心」(出典:空華日用工夫略集‐永和三年(1377)五月二日)

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