水または油などの溶媒に不溶で、媒体に分散した状態で使用する有機系着色剤の総称。印刷インキ、塗料、ゴムおよびプラスチックの着色、顔料捺染(なっせん)、合成繊維の原液着色、雑貨類の着色など、広い範囲にわたる着色剤として利用されている。色調が鮮明で、着色力も大きく、透明性にも優れているものが多い。耐光性も優良なものが多いが、無機顔料よりは劣る。
有機顔料は次の二つに大別される。
〔1〕溶媒不溶性色素が顔料として使用される場合。(1)ニトロ系色素、(2)アゾ系色素、(3)スレン系、チオインジゴ系、ペリレン系などのバット染料あるいは分散染料、(4)ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、フタロシアニン系色素、キノフタロン系色素などがある。
〔2〕水溶性の塩基性染料あるいは酸性染料を適当な方法で不溶性としたもので、レーキlakeという。水溶性染料の沈殿剤としては次のようなものがある。塩基性染料のようなカチオン性色素に対しては、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブデンタングステン酸、タンニン酸、吐酒石、脂肪酸などが用いられる。一方、酸性染料のようなアニオン性色素に対しては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウムなどが使用されている。一般にレーキをつくる場合、体質顔料(ベースとなる無機固体粒子)を加えるが、体質顔料を用いず不溶化したものは堅牢(けんろう)度も良好で、かつ着色力も高く、とくにトナーtonerとよばれている。
[飛田満彦]
有機化合物を発色母体とする顔料.色素自身が水に不溶性の顔料色素(pigment color)と,水溶性染料をなんらかの手段で不溶化したレーキとの二つに大別される.無機顔料に比べて耐熱性,耐光性,耐溶媒性は劣るが,色相が豊富で鮮明であり,着色力や透明性も大きいという長所をもつため,有機顔料の需要はますます増加している.顔料色素は分子中に親水性基を含まず,その化学構造は多岐にわたるが,工業的には色の種類が豊富な点でアゾ顔料(黄~橙色)が,また耐熱,耐薬品性のすぐれている点でフタロシアニン顔料(青~緑色)がもっとも重要である.さらに堅ろう性の高い高級顔料としてアントラキノン顔料(紫)があり,またジオキサジン系,アクリジン系(赤~赤紫色)のなかにも近年堅ろう度の高いものが見いだされている.有機顔料の最大の需要は印刷インキであり,そのほか塗料,ゴム,プラスチック,絵の具,紙,せっけん,香粧品の着色など用途はきわめて広い.近年,有機顔料は顔料なせん,および化学繊維,合成繊維の紡糸原液着色など繊維の染色にも応用されるようになり,本来の染料とその優劣を競うに至っている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…着色を目的とした不溶性の粉体で,有機顔料organic pigmentと無機顔料inorganic pigmentに分けられる。有機顔料はほとんどすべて着色の目的に使用されるが,無機顔料は着色剤以外に充てん剤や体質補強剤などにも使用される。…
…さらに染色,着色とは関係なく,触媒,レーザー,半導体,増・減感色素,光電導材料,潤滑剤などきわめて先端技術的な用途が開発され,使用量は少量ではあるが染料の利用の可能性には限りがない。染料と有機顔料は,使用目的,化学構造,製造方法,発展の歴史から考えてきわめて近縁な関係にあり,区別することの困難な場合もある。染料が被染物を染色する際には溶解ないし溶解に近い形の分散状態を必要とし,さらにさまざまな機構をもつ染着技術により単分子状態で被染物に保持されるのに対し,有機顔料の場合には溶解,染着という性質はいっさい無用である。…
※「有機顔料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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