日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーボンブラック」の意味・わかりやすい解説
カーボンブラック
かーぼんぶらっく
carbon black
いわゆる煤(すす)のことである。古代からもっとも身近にある優れた黒色の粉体で、インキ、墨、絵の具に用いられてきた。20世紀になり、ゴムの補強剤として認められ、ゴム工業の発展とともに、カーボンブラックの製造も盛んになった。このような用途のほか、ポリマーの耐候性劣化防止、電導性向上を目的とした用途、あるいは炭素材に使用されている。カーボンブラックは、炭化水素が熱分解あるいは不完全燃焼することにより生成する。したがって製法は、熱分解法と不完全燃焼法とに大別される。
カーボンブラックは、グラファイト型構造の炭素六角形の網目の層が3~5層重なり、これが鎖状に連なった構造(これをストラクチャーという)をしている。この層にはカルボキシ基(カルボキシル基)、ヒドロキシ基、カルボニル基などの基が存在するものもある。カーボンブラックの物性を支配する三つの要素は、粒子径、ストラクチャーと表面の性質(pH、揮発分)である。粒子径は通常10~500ミリミクロン、粒子径が小さいほど黒の色調が強く、着色力も大きい。ストラクチャーはジブチルフサレート(DBP)の吸着量により測定でき、各種バインダーへの配合性、粘度などのほか黒の色調にも影響する。表面の酸化の状態は、水でスラリーをつくり、そのpHを測定し、7以下の場合、酸化を受けているとされる。表面の状態は、各種ワニス類との親和性、インキの流動性、塗料の安定性に影響する。
[大塚 淳]