酸化防止剤(読み)さんかぼうしざい(英語表記)antioxidant

翻訳|antioxidant

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

酸化防止剤
さんかぼうしざい
antioxidant

油脂、せっけん、潤滑油、ゴムなどの自動酸化(大気中の酸素分子による緩慢な酸化)を防止、抑制するために加える物質で、抗酸化剤ともいう。ゴムの場合、老化防止剤ともいう。油脂は自動酸化により酸敗し、いやなにおいや味を生ずる。これを抑制するのが酸化防止剤で、フェノール類、アミン類などが使用される。これらの物質は、自動酸化反応を直接抑制するが、自動酸化反応の触媒になる金属の作用を抑え、酸化防止剤に用いられる物質もある。

 油脂の酸化防止剤としては、ビタミンE(トコフェロール)が天然に存在している。ごま油にはセサモールも含まれ、強力な酸化防止剤として作用する。野菜類にはケルセチンが酸化防止剤として含有されている。生体は脂質を含むが、生体内抗酸化剤として働くものにビタミンEおよびビタミンB6がある。ビタミンC(アスコルビン酸)は抗酸化剤としても働きうるが、クエン酸、リン酸などのようにビタミンEの相乗剤(併用により酸化防止剤の作用を増大させる物質)としての作用もある。なお、DNA(デオキシリボ核酸)にも相乗剤としての働きがある。油脂含有食品の酸化防止剤としては、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、プロトカテキュア酸エチル、没食子酸イソアミル、没食子酸プロピルなどの合成酸化防止剤、NDGA(ノルジヒドログアヤレチン酸)、グアヤク脂などの天然酸化防止剤の使用が認められている。食用油の酸化防止剤にはフェノール系のものが重要である。

 合成ゴムには酸化防止剤として通常、フェニル-β-ナフチルアミンが使用される。潤滑油にはフェノール類、芳香族アミン類が使われる。これらはいずれも自動酸化の際、生成する活性ラジカルを消滅せしめることにより、ラジカル連鎖成長反応を断ち切り、自動酸化反応を抑制する作用をもっている。高温で用いられるエンジンオイルなどには、金属不活性化剤などが使用される。

[福住一雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版の解説

酸化防止剤
サンカボウシザイ
antioxidant

反応中や製品の使用中に酸化が進み,構造や性質が変化するのを抑制するために添加する安定剤.多くの高分子物質,食品,油脂,潤滑油などに添加されている.フェノール類,アミン類,ヒドロキノン類,ヒドロキシルアミン類,硫黄化合物リンの化合物などがこの目的で使用される.たとえば,ゴムの老化防止のために,主としてアミン誘導体をゴムのなかに練り込む.しかし,これらの安定剤によって完全に酸化を防止できるのではなくて,ゴムの老化速度を遅らせるにすぎない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内の酸化防止剤の言及

【潤滑油】より

…これらの潤滑油原料は,必要に応じて,溶剤精製法によって芳香族分を除き,水素化精製法によって硫黄分その他の不純物を除去し,また溶剤脱蠟法によって高分子量のパラフィンワックスを分離したのち,粘度を調整し,各種の添加剤を加えて最終製品とする。すなわち石油系の基油(ベース・オイル)は適切な粘度(分子量)をもつパラフィン系炭化水素またはナフテン(シクロパラフィン系炭化水素)を主成分とするが,その性能の向上をはかるために清浄分散剤,粘度指数向上剤,酸化防止剤,流動点降下剤,さび止め剤,消泡剤,極圧添加剤などを配合する。清浄分散剤は,潤滑油の酸化生成物やエンジン燃料の不完全燃焼物の固型化,凝集を防ぎ,エンジン内を清浄に保つ目的で添加される。…

※「酸化防止剤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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