厚顔抄(読み)コウガンショウ

デジタル大辞泉 「厚顔抄」の意味・読み・例文・類語

こうがんしょう〔コウガンセウ〕【厚顔抄】

江戸前期の記紀歌謡注釈書。3巻。契沖著。徳川光圀みつくにの命により、元禄4年(1691)成立旧説を批判して実証的な態度自説を述べている。

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精選版 日本国語大辞典 「厚顔抄」の意味・読み・例文・類語

こうがんしょう‥セウ【厚顔抄】

  1. 記紀歌謡の注釈書。三巻。徳川光圀の命による契沖の著。元祿四年(一六九一)成立。上中二巻に日本書紀の歌一二七首、下巻古事記の歌五六首をとりあげ、旧説を批判し、自説を述べたもの。特に下巻には独創的な解釈が多い。万葉集をはじめとする多くの例証を集め、実証的、帰納的な解釈を施してこの分野先駆となる。

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改訂新版 世界大百科事典 「厚顔抄」の意味・わかりやすい解説

厚顔抄 (こうがんしょう)

古代歌謡の注釈書。契沖著。1691年(元禄4)成立。3巻。徳川光圀から《日本書紀》の歌謡の注釈を依頼されて書いたもので,《古事記》の歌謡をも注釈している。前年,契沖は《万葉集》の注釈《万葉代匠記》を完成しており,万葉研究の方法と成果を十分利用して,古代歌謡の注釈をしている。いくらか不備は残っているが,本書によって,古代歌謡の正しい研究の出発点がつくられた。
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世界大百科事典(旧版)内の厚顔抄の言及

【契沖】より

…さらに悉曇学によって言葉についての厳密な感覚をもっていた契沖は,万葉仮名の表記に用字の統一性があることを発見して《和字正濫抄》を著し,〈歴史的仮名遣い〉の基礎を確立した。上記の著作のほかに,古典の注釈書には《厚顔抄》(記紀歌謡の注釈),《古今余材抄》《勢語臆断》《源注拾遺》《百人一首改観抄》などがあり,歌枕の研究として《勝地吐懐篇》,随筆として《河社(かわやしろ)》《円珠庵雑記》などがある。契沖の後世に与えた影響は大きく,荷田春満,賀茂真淵,本居宣長,上田秋成,橘守部らの多くの研究がその成果を取り入れており,契沖は〈古学の始祖〉(本居宣長《初山踏》)として近世古典研究の出発点に位置しているといえる。…

※「厚顔抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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