取立(読み)とりたてる

精選版 日本国語大辞典 「取立」の意味・読み・例文・類語

とり‐た・てる【取立】

〘他タ下一〙 とりた・つ 〘他タ下二〙
① 取り上げる。取り上げて立てる。取ってかまえる。
※竹取(9C末‐10C初)「弓矢をとりたてんとすれ共手に力もなくなりて」
② 並べ立てる。そろえる。調える。用意する。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「こぐるま二つづつ、しろがね、こがねの馬、さまざま色々とりたてて」
③ 特に取り上げていう。特別のものとして数え上げる。
※枕(10C終)三六「をかしきこと、とりたてて書くべき事ならねど」
源氏(1001‐14頃)桐壺「とりたててはかばかしき御後見(うしろみ)しなければ」
④ 特にひいきにする。引き立てる。推挙する。登用する。また、面倒を見る。世話をする。
神皇正統記(1339‐43)下「これは外孫なれば取立て領ずる所などもあまたはからひおき」
⑤ 仕立て上げる。髪を結う。
※永久百首(1116)雑「うなゐ子がはなちの髪を取たててまきそめ川よ淵瀬かはるな〈源俊頼〉」
⑥ 取り去る。ひきはらう。片付ける。
大和(947‐957頃)一四〇「かの廂にしかれたりし物はさながらありや。とりたてやしたまひてし」
⑦ 催促して徴収する。また、強制的に取る。
御触書寛保集成二三・正徳三年(1713)四月「御年貢之事〈略〉其未進之分は当御代官当地頭より取立候て」

とり‐たて【取立】

〘名〙
抜擢(ばってき)すること。登用。挙用。
※甲陽軍鑑(17C初)品三二「梶原は頼朝の取立の被官なり」
② 特に取りあげて世話をすること。世間体が立つようにしてやること。一人前にすること。しこみ。
日葡辞書(1603‐04)「アノ ヒトワ ワガ toritategia(トリタテヂャ)
③ 催促して徴収すること。強制的に取ること。また、特に銀行などが手形小切手の所持人から委託をうけて、支払人に支払わせること。
開化のはなし(1879)〈辻弘想〉二「区内数百の人民が課銭(トリタテ)に苦しみ歎くなど」
④ 取ったばかりで間のないこと。また、そのもの。とれたて。
※玉塵抄(1563)九「采は山からきってとりたてのままの木ぞ」
新吉原遊郭で、新造出しでない遊女の称。
随筆・柳花通誌(1844)「今は姉女郎無きものをば、都で取立といふとぞ」

とり‐だち【取立】

〘名〙 幼児が物につかまって立ち上がること。
浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)四「はや取立(トリダチ)時分より、六尺三寸の、棒を持ならはせ」

とれ‐たて【取立】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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