改訂新版 世界大百科事典 「口腔白板症」の意味・わかりやすい解説
口腔白板症 (こうこうはくばんしょう)
oral leukoplakia
医学的には〈こうくうはくばんしょう〉という。口腔粘膜に生ずる角化性白斑性病変で,WHO口腔前癌状態に関する調査委員会(1967)では,擦過によっても除去できない白斑で,他の診断可能な疾患に分類できないものと定義されている。口腔全域に生ずるが,歯肉,頰粘膜,舌に多い。男性は女性より多く,40歳以上が大半を占めている。色調,形,広がり方はさまざまで,白色,真珠色,灰白色,さらに紅斑を交えるものもあり,周囲の境界が鮮明なものや不鮮明なもの,表面は平滑であったり隆起し,粗造,しわ状,敷石状,乳頭状ないしいぼ状のものなどがある。通常自覚症状はないが,粗糙(そぞう)感,糜爛(びらん)を伴うと疼痛がある。病因は現在なお不明であるが,口腔粘膜の年齢による変化を基盤として,なんらかの慢性刺激が加わり,病変を発現させるものと考えられている。臨床像あるいは組織像が多様で悪性化がみられることから前癌病変の一つとされており,口腔粘膜癌との関連が深い。癌化するものは3~6%といわれ,高齢者,女性に癌化率が高い。治療困難な粘膜疾患の一つで,外科的切除,凍結外科,レーザー照射などが行われるが,綿密な経過観察がたいせつで,紅斑の出現また隆起してきたものでは病理組織学的検査により癌化の有無を確認しなければならない。
執筆者:塩田 重利
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報