日本大百科全書(ニッポニカ) 「古典古代的共同体」の意味・わかりやすい解説
古典古代的共同体
こてんこだいてききょうどうたい
die antike Gemeinde ドイツ語
マルクスが『資本主義的生産に先行する諸形態』(『経済学批判要綱』〈1857~58〉のなかの一節で、のちに単行本としても出版された)のなかで、アジア的、ゲルマン的共同体と並んで世界史のうえに位置づけた共同体の一形態。マルクスは、古代ギリシア・ローマに典型的に発展したポリス型の市民共同体を念頭に置いてその特徴づけを行ったが、それによると、第一の特徴は、国家としての共同体は自由平等な私的土地所有者の相互関係であり、彼らの土地所有のための前提は、彼らが共同体の成員であることにあり、この共同体を存続させる前提は、これら労働する分割地農民の間の平等の維持にあった。第二には、共同体成員による私的土地所有と並んで、共同体に属する未分割地などの形で存在する公有地が共同体の土地所有の不可欠の構成要素をなしていた。第三には、共同体は都市国家をなしており、都市は土地所有者の定住地であり、農耕地は都市の領域として現れている。第四には、共同体の出会う困難は、他の共同体からのみおこるのであり、したがって、戦争が共同体存続のための共同的任務となる。今日の研究ではこうした古典古代的共同体の範疇(はんちゅう)に属するものとしてあげられうるものとしては、フェニキア人の都市国家(カルタゴなどの植民市を含む)がある。またミケーネ文明の基礎にあったミケーネ的共同体も、未熟な段階にあったとはいえ、私有地・公有地並存の点で、古典古代的共同体の一形態と考えることができる。
[太田秀通]