改訂新版 世界大百科事典 「古沢平作」の意味・わかりやすい解説
古沢平作 (こざわへいさく)
生没年:1897-1969(明治30-昭和44)
精神分析学者。日本の精神分析の先駆者として,力動的な臨床精神医学の基礎をつくることに貢献した。厚木に生まれ,東北大学医学部を卒業し,同精神科の丸井清泰の下で助教授を務めた。丸井とともに精神分析を初めて日本に導入し,普及に努力,1932-33年にかけてウィーンのフロイトのもとに留学し,ステルバR.Sterbaの教育分析とフェダーンの指導を受けた。フロイトのエディプス・コンプレクスが父子関係を重視するのに対し,早期母子関係に注目した独自の阿闍世(あじやせ)コンプレクスの理論を唱え,その論文をフロイトに提示したがあまり関心をひかなかったといわれる。帰国後,東京で日本唯一の精神分析医として開業し,かたわら精神科医や心理学者の教育に従事して,幾多の俊秀を育てた。また,55年日本精神分析学会を創設し,初代会長となった。
執筆者:馬場 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報