吉富名(読み)よしとみみよう

日本歴史地名大系 「吉富名」の解説

吉富名
よしとみみよう

現吉富町・新吉富村から大分県下毛しもげ郡にかけて広がる国衙領の別名。鎌倉期を通じて相論の対象となっている。建保五年(一二一七)正月二二日の大宰府守護所下文案(末久文書/鎌倉遺文四)にみえる豊前国「吉富貞富多布原村・山国吉富名等」の地頭職をめぐり、上毛こうげ郡の郡司宗成・俊忠は同国住人田部太子を鎌倉幕府に訴えている。この場合、前者の吉富は「貞富」、多布原とうばる(現大平村)冠称で、後者山国やまくに(現大分県下毛郡)内の吉富名の意と考えられる。建保五年の裁定では文治二年(一一八六)の鎌倉殿御判下文の所持を理由に田部太子の地頭職が認められている(前掲守護所下文案)。貞永元年(一二三二)には地頭の大和太郎兵衛尉時景が三毛・下毛両郡の吉富名地頭職の相伝知行地で名主・下作人が指示に従わないと訴え、少弐資能は当名内の名主の一人である成恒大三郎国守と大和時景を大宰府へ呼んで真相を究明しようとしている(同年閏九月九日「大宰府守護所下文案」・同月一七日「少弐資能書状案」末久文書/鎌倉遺文六)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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