(読み)さえずる

精選版 日本国語大辞典 「囀」の意味・読み・例文・類語

さえず・る さへづる【囀】

〘自ラ五(四)〙
小鳥がしきりに鳴く。《季・春》
※続日本後紀‐嘉祥二年(849)三月庚辰「副之長歌、奉献其長歌詞曰、は枝に遊て飛舞て囀歌ひ」
古今(905‐914)春上・二八「もも千鳥さへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふりゆく〈よみ人しらず〉」
② 口数多く早口でしゃべる。
源氏(1001‐14頃)常夏「いとよげに、いま少しさえづればいふかひなしと思して」
外国人や地方の人、身分のいやしい者などが、聞き分けにくい言葉でしゃべる。
紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一五日「あやしき賤の男のさへづりありくけしきどもまで」
今昔(1120頃か)三一「此の胡(えびす)の人一時許(ばかり)(さへづり)合て」
雅楽で、舞いながら漢詩句などを朗詠する。
神楽歌(9C後)千歳法「千歳法 しかさへづる声」
ぺちゃくちゃととめどもなく話すのを蔑(さげす)んでいう。
※玉塵抄(1563)四二「口をたたきさえつる者を、饒舌と云ぞ」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「何かツベコベと端手(はした)なく囀ってゐた」

さえずり さへづり【囀】

〘名〙 (動詞「さえずる(囀)」の連用形の名詞化)
① 鳥がしきりに鳴くこと。また、その声。《季・春》
※源氏(1001‐14頃)胡蝶「朝ぼらけの鳥のさえづりを、中宮は物隔てて、ねたうきこしめしけり」
※天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事「ケック コズエニ ノボッテ sayezzuri(サエヅリ) ヲモッテ ナツノ アツサヲ ナグサメマラスル トコロニ」
② やかましくしゃべること。
※源氏(1001‐14頃)松風「俄かなる御あるじとさわぎて、鵜飼ども召したるに、海人のさへづりおぼし出でらる」
③ 聞き分けにくい言葉でしゃべること。
※俳諧・也哉抄(1774)序「木伐る山賤、みるめかづく蜑をとめらがさへづりまでも」
舞楽で、舞人が舞いながら漢詩句などを朗詠すること。「陵王」「安摩(あま)」「二舞(にのまい)」の中にみられる。
⑤ はなうたまじり。
※歌謡・松の葉(1703)二・玉くしげ「五丁の天の暁に、帰るさ繁きたはれ男の、己がさへづりさまざまに、小歌浄瑠璃だてらしく」
⑥ 鯨(くじら)の舌。
※俳諧・手挑灯(1745)中「十一月〈略〉鯨〈略〉鯨の舌をさへづりと云」

さいずらう さひづらふ【囀】

わかりにくい外国人のことばを鳥のさえずりなどに見たてて、鳥のさえずるようなの意で、外国の意の「漢(あや)」にかかる。さいずるや。
万葉(8C後)七・一二七三「住吉のはづまの君が馬乗衣雑豆臈(さひヅらふ)漢女(あやめ)をすゑて縫へる衣ぞ」

さいずり さひづり【囀】

さいず・る さひづる【囀】

〘自ラ四〙 =さえずる(囀)〔黒本本節用集(室町)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【千歳】より

…この曲は,前張(さいばり)といわれる民謡風の歌群の最終部に歌われるが,歌というより祝言の呪文のようなもので,《鍋島本神楽歌》《楽章類語鈔》などにはこれの曲名に《千歳法》とあって,下に〈しかさへづる声〉と注記がある。〈さへづる〉は雅楽にいう囀(てん∥さえずり)(舞楽の途中で漢詩句を朗誦すること)で,これと同様の唱法を用いるとの注記かといわれている。なお江戸末期の注釈書《梁塵後抄》はこの注を,昔は千歳と称する者が出てこの詞を唱え,その後に《早歌(はやうた)》を舞ったのであろうと,能の《式三番(しきさんばん)》との関係を暗示するような説を述べているが確証はない。…

※「囀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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