さえずりさへづり【囀】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「さえずる(囀)」の連用形の名詞化 )
- ① 鳥がしきりに鳴くこと。また、その声。《 季語・春 》
- [初出の実例]「朝ぼらけの鳥のさえづりを、中宮は物隔てて、ねたうきこしめしけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
- 「ケック コズエニ ノボッテ sayezzuri(サエヅリ) ヲモッテ ナツノ アツサヲ ナグサメマラスル トコロニ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
- ② やかましくしゃべること。
- [初出の実例]「俄かなる御あるじとさわぎて、鵜飼ども召したるに、海人のさへづりおぼし出でらる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)
- ③ 聞き分けにくい言葉でしゃべること。
- [初出の実例]「木伐る山賤、みるめかづく蜑をとめらがさへづりまでも」(出典:俳諧・也哉抄(1774)序)
- ④ 舞楽で、舞人が舞いながら漢詩句などを朗詠すること。「陵王」「安摩(あま)」「二舞(にのまい)」の中にみられる。
- ⑤ はなうたまじり。
- [初出の実例]「五丁の天の暁に、帰るさ繁きたはれ男の、己がさへづりさまざまに、小歌浄瑠璃だてらしく」(出典:歌謡・松の葉(1703)二・玉くしげ)
- ⑥ 鯨(くじら)の舌。
- [初出の実例]「十一月〈略〉鯨〈略〉鯨の舌をさへづりと云」(出典:俳諧・手挑灯(1745)中)
さいずらうさひづらふ【囀】
- 枕 わかりにくい外国人のことばを鳥のさえずりなどに見たてて、鳥のさえずるようなの意で、外国の意の「漢(あや)」にかかる。さいずるや。
- [初出の実例]「住吉のはづまの君が馬乗衣雑豆臈(さひヅらふ)漢女(あやめ)をすゑて縫へる衣ぞ」(出典:万葉集(8C後)七・一二七三)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「囀」の読み・字形・画数・意味
囀
21画
[字音] テン
[字訓] さえずる
[字形] 形声
声符は轉(転)(てん)。〔玉
〕に「鳥鳴くなり」とあり、鳴きつづける鳥の声をいう。
[訓義]
1. さえずる、鳴きつづける。
2. 鳴き声がかわる、声をかえる。
[古辞書の訓]
〔新
字鏡〕囀 左へ豆留(さへづる) 〔名義抄〕囀 サヘヅル・カマビスシ・ヒヒラク
[熟語]
囀喉▶
[下接語]
哀囀・歌囀・改囀・喜囀・急囀・嬌囀・競囀・孤囀・巧囀・縦囀・新囀・悽囀・清囀・百囀・妙囀・幽囀
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の囀の言及
【千歳】より
…この曲は,前張(さいばり)といわれる民謡風の歌群の最終部に歌われるが,歌というより祝言の呪文のようなもので,《鍋島本神楽歌》《楽章類語鈔》などにはこれの曲名に《千歳法》とあって,下に〈しかさへづる声〉と注記がある。〈さへづる〉は雅楽にいう囀(てん∥さえずり)(舞楽の途中で漢詩句を朗誦すること)で,これと同様の唱法を用いるとの注記かといわれている。なお江戸末期の注釈書《梁塵後抄》はこの注を,昔は千歳と称する者が出てこの詞を唱え,その後に《早歌(はやうた)》を舞ったのであろうと,能の《[式三番](しきさんばん)》との関係を暗示するような説を述べているが確証はない。…
※「囀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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