日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民教育運動」の意味・わかりやすい解説
国民教育運動
こくみんきょういくうんどう
公権力によって組織された国民教育の改革を求める意見や行動の総称。狭義には、1950年代中葉から日教組(日本教職員組合)を中心に唱えられた国民教育論と、それに依拠する運動を意味する。教師と父母、国民が連帯し、学校教育をより市民的なものに改革するのが目的であった。第二次世界大戦後、同じように国家による教育の管理統制に対して批判的な運動を展開した「民間教育運動」に比べて、左派的少数派の運動という面が強かった。日教組教育制度検討委員会編『日本の教育改革を求めて』(1974)、同第二次教育制度検討委員会編『現代日本の教育改革』(1983)などはその理論的到達点であったといえる。しかし国家による教育改革が推し進められる一方、国民の価値観の多様化が進むなかで運動としての実態を失い、この運動は歴史的役割を終えたといえる。
[尾崎ムゲン]
『堀尾輝久著『現代教育の思想と構造』(1971・岩波書店)』▽『日本教職員組合編『日本の教育』各年版(一ツ橋書房)』