日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際均衡・国内均衡」の意味・わかりやすい解説
国際均衡・国内均衡
こくさいきんこうこくないきんこう
国際均衡external balanceとは、国際間の取引全体が均衡している状態、ないしは国際収支が均衡している状態をいい、国内均衡internal balanceとは、失業やインフレを伴わずに国内における総需要と総供給が均衡している状態をいう。固定為替(かわせ)相場制のもとでは、政策目標としての国際均衡と国内均衡はしばしば両立せず、国際均衡を維持しようとすれば国内均衡が損なわれ、逆に国内均衡を回復させようとすれば国際収支が不均衡に陥りやすいというジレンマがある。国際収支の赤字を調整するためにとられる金融引締めが、国際収支を改善すると同時に、他方では国内の総需要を削減して失業を増加させ、国内均衡を損なうという副次的な効果をもち、また国内の失業を解消しようとしてとられる総需要拡大が、乗数効果を通じて輸入を増加させ、国際収支を悪化させるのである。
このようなジレンマは、二つの政策目標を金融政策という一つの政策手段によって達成しようとするためにおこってくるといってよい。そこから、二つの政策目標に対しては二つの政策手段を組み合わせるべきだというポリシー・ミックスが提唱される。たとえば、国際均衡を達成するためには為替相場を変更するという政策手段を用い、国内均衡を維持するためには総需要管理政策をとることによって、国際均衡と国内均衡を同時に達成することが可能になる。自由変動為替相場制のもとでは、国際均衡が為替相場の変化を媒介にして自動的に維持されるので、このジレンマはいちおう解消するが、しかし、為替相場の変化によってただちに達成される均衡は、金融資産の国際移動を通じてもたらされる一時的、短期的な均衡であって、それはかならずしも中期的、長期的な均衡を意味しないことに注意しなければならない。
[志田 明]