日本語名は自動体外式除細動器。心臓が細かくけいれんし、血液を送れなくなる重い不整脈「心室細動」の患者に電気ショックを与えて救命する装置。従来は、使用は医師に限定されていたが、厚生労働省は2003年(平成15)4月から救急救命士、さらに2004年7月からは一般人の使用を認めた。空港や駅、集会場やスポーツ施設などに設置が進み、医療・消防機関を除いた施設のAEDだけで2008年末には約15万台になっている。
使用法は簡単で、音声ガイダンスに沿って操作をする。電極パッドを、心臓や呼吸が停止して意識を失った人の右胸上部と左胸下部に貼り付けると、AEDが心臓のリズムを自動解析する。電気ショックが必要な状態と解析した場合は、機器が自動で放電の準備をするので、充電が完了したら処置の指示に従ってショックボタンを押し、除細動を行う。医学的知識がなくても使用できるが、より確実迅速に行うため、講習を受けておくことが望ましい。
AEDは2005年3月から9月まで開かれた愛知万博会場で約100台配置され、会場内で心停止で倒れた3人が全員AEDで救命された。京都大学の調査によると、2005年から2007年に公共の場で倒れるのを目撃された1万2631人のうち、462人は近くにいた人がAEDを操作した。その結果、32%は脳の障害を残さず社会復帰できたが、それ以外の、救急隊の到着後にAED処置を受けた人については14%と半分以下だった。AEDの実施が1分遅れると、脳の障害を残さずに社会復帰した人の率は9%下がる計算になるという。
厚生労働省によると、2007年に実際に使われたのは287件で、380台に1台の割合だった。めったに使われないが、実際に使おうとする段階で有効に機能しない可能性が問題になっている。2010年4月、大阪市内で救急隊員が操作したAEDが動かず、男性が死亡した。消防機関が装置の不具合を疑ったケースが2009年だけで176件もあり、2008年以降、4社の約21万台のAEDが回収や無償修理の対象になった。
[田辺 功]
『岡田和夫・三田村秀雄監訳『実践 AEDマニュアル』(2004・American Heart Association、中山書店発売)』▽『輿水健治著『AED(自動体外式除細動器)を、使ってください――人工呼吸・心臓マッサージができなくても』(2006・保健同人社)』
(星野美穂 フリーライター / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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