日本大百科全書(ニッポニカ) 「在宅緩和ケア」の意味・わかりやすい解説
在宅緩和ケア
ざいたくかんわけあ
病気の進行などに伴っておこる痛みやつらさを取り除く緩和ケアを自宅等で受けること。また、提供されるケアそのもののこと。療養の場が病院から在宅へ移行している近年において発展してきた医療ケアの形である。
在宅緩和ケアを受けるにあたっては、通院もしくは入院している病院の担当医によって訪問診療に向けての紹介状が作成され、病院の担当医などの職員が訪問診療医や訪問看護ステーションと連絡を取り、訪問診療、訪問看護、訪問介護、訪問入浴といったサービスが調整される。一人暮らしであっても、これらのサービスを整えることで、いままでの生活に近い形を維持しながら、住み慣れた自宅や施設でケアを受けることができる。かかりつけ医がいない場合でも、在宅緩和ケアを行っている医療機関や訪問看護ステーションなどに相談することで、在宅緩和ケアを受けることができる。また都道府県によっては、在宅緩和ケア支援センターが設置されており、多くは地域の病院が委託されて、相談の受付や支援を行っている。なお、在宅緩和ケアを希望する場合は、患者自身と家族が在宅緩和ケアを望み、かつ患者が自身の病気の状況と今後の見通しについて理解していることが望ましいとされる。
在宅でケアを受けていても、具合が悪くなった場合には訪問診療医の指示に基づいて入院することもできる。また介護する家族の休息のために短期的に入院すること(レスパイト入院)も可能である。なお、介護施設に入所している人でも、訪問診療による緩和ケアを受けられる場合もある。
在宅緩和ケアには公的医療保険が適用され、緩和ケア病棟に入院する場合よりも費用が安くなることがある。また介護保険が適用されれば、介護用ベッドのレンタルなど介護保険サービスを利用することもできる。一方で、訪問診療医の交通費など、利用する制度によっては別途費用が必要となることもある。
[渡邊清高 2022年4月19日]