自宅などで過ごす患者を看護師らが訪問してケアする。年齢や疾患などによって医療保険適用型と介護保険適用型の二つに分かれる。難病や末期がん、精神科の場合は医療型で、訪問回数は原則週3回。ただ、難病や末期がんでは毎日3回まで診療報酬を受け取れる。提供主体は病院や診療所もあるが、訪問看護ステーションが大半を占め、その半分以上は株式会社など営利法人の運営。地域で患者宅を一軒一軒回るタイプのほか、近年は老人ホーム併設で入居者だけを対象にする例も増えている。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
看護の有資格者が対象者の自宅等を訪問し、対象者の健康の保持・増進・回復を促したり、疾病や障害による影響を最小限にとどめ、対象者の生活の質を高めることができるように、あるいは終末期を在宅で安らかに過ごすことができるように、対象者の状態に応じた看護ケア(日常生活援助と診療の補助業務)の提供や患者・家族への指導、必要な資源の提供等を行うこと。
[横山美樹 2021年5月21日]
日本における訪問看護は、(1)行政の保障制度として実施されているもの(保健所・市町村の保健師が、主治医の指示書なしで健康課題をもつ住民の家庭を訪問して保健指導、健康相談を行う家庭訪問)、(2)医療保険制度・介護保険制度として実施されているもの、(3)個人契約によるもの、に大別される。
(1)の保健師による訪問看護・指導は、日本において保健師活動が広がるなかで行われてきたものであり、時代の要請にこたえ、結核などの感染症、栄養改善、受胎調節、公害、高齢者保健、母子保健、精神保健、難病やエイズなど公衆衛生に関するものから個別性の高いケアにわたるものまで実施され、現在でも保健師により行われているものである。
しかしながら、近年注目されているのは(2)の医療保険制度・介護保険制度として実施されている訪問看護である。日本では高齢化に伴い看護ケアが病院や施設から在宅へ移り、1991年(平成3)に老人保健法の改正により老人訪問看護制度が創設され、1992年に日本で最初の老人訪問看護ステーションが誕生した。また医療法の改正により、「居宅」も医療提供の場に位置づけられた。1994年には健康保険法が改正され、高齢者以外の全年齢層に対しても訪問看護サービスを提供できる訪問看護制度が開始された。1997年には介護保険法が制定され、2000年(平成12)から施行された。以降訪問看護サービスは、従来の医療保険制度に基づく医療サービスだけでなく、介護保険制度に基づく福祉サービスの両方を含んでいる。
[横山美樹 2021年5月21日]
訪問看護サービス利用者のほとんどは高齢者であり、介護保険制度による利用者が大半を占めているのが現状である。介護保険制度による訪問看護サービスは、要支援・要介護認定された被保険者を対象とし、ケアマネージャー(介護支援専門員)が立案した居宅介護サービス計画(ケアプラン)と主治医の訪問看護指示書に沿って提供され、サービス提供の実施主体は訪問看護ステーションと医療機関である。要介護度に応じて、ケアプランに組み込める範囲であれば、原則、利用制限がなく1日に複数回の訪問や2か所以上の事業者からの訪問も可能であるが、看護師は一人での対応が基本である。要介護度により支給限度額が決められており、原則1~2割(所得による)の自己負担でサービスを利用できる(限度額を超えた分は自己負担となる)。
医療保険制度による訪問看護の対象者は、65歳未満の健康保険加入者(40~65歳未満で要支援・要介護認定された者を除く)や、65歳以上でも要支援・要介護に該当しない者、「厚生労働大臣が定める疾病等」(末期の悪性腫瘍(しゅよう)、多発性硬化症、重症筋無力症など20の疾病および状態)の罹患(りかん)者など、原則として介護保険による訪問看護サービスの利用者に該当しない者となる。保険給付の対象となるのは、通常は週に1~3回まで、1回の訪問で最大90分までであるが、医療依存度の高い者は、週1回、90分を超える長時間訪問看護を受けることができる。年齢により費用の1~3割が自己負担となる。
個人契約による訪問看護は、年齢や疾患による利用制限がなく、主治医の指示書も必要ない反面、全額自己負担となる。
[横山美樹 2021年5月21日]
日本においては、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途(めど)に、要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を目ざしており、そのなかで、訪問看護の役割は非常に大きいといえる。
[横山美樹 2021年5月21日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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