改訂新版 世界大百科事典 「地心座標」の意味・わかりやすい解説
地心座標 (ちしんざひょう)
geocentric coordinates
地球の中心に原点をとった座標。地球上での位置を表すときに経度と緯度を使用しているが,この場合に用いられる緯度は地理緯度geographical latitude,または測地緯度geodetic latitudeと呼ばれるものである。地球は回転楕円体であるため,地球上でその場所に立てた垂直線は,赤道と南北両極以外では地球の中心を通らない。この垂直線と赤道面との間の角を地理緯度という。これに対して地球の中心からその場所を結んだ線を引き,その線と赤道面との角を地心緯度geocentric latitudeという。地心緯度と地理緯度は赤道と南北両極では一致するが,緯度45°のところでその差は最大になり約700″の大きさとなる。惑星やすい星などの太陽系天体の位置を示すときに,太陽を原点にとった日心座標と地球の中心を原点にとった地心座標の2種類のものを示されることが多い。これは日心座標が力学理論に従ってまず計算され,観測の便利のため地心座標に変換されるからである。有限の距離にある天体では地心座標と地球上の観測点から見た位置とは少しずれていて,この違いを視差と呼んでいるが,太陽の場合最大8.″8になり,地球からの距離の遠いものほど小さい。また人工衛星や月は地球を中心にして運動しているので,その運動を表現する軌道要素は地心座標に従ったものである。
執筆者:古川 麒一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報