ケプラーの法則に従う天体の運動の状態を指定する6個の定数。ケプラー運動は惑星や衛星などの太陽系天体の運動の基本となっているので,軌道要素はこれらの天体の運動を表すものである。現実の天体の運動は,摂動によってケプラー運動からわずかにずれるが,軌道要素が時間とともに変動すると考えることによって,摂動の効果をとり入れることができる。軌道要素には,もっぱら摂動論の理論的研究に用いられる正準要素もあるが,最もよく使われているのはケプラーの軌道要素(ケプラー要素ともいう)であり,それについて述べる。
ケプラー要素は,太陽を公転する天体の場合には,次の6個の定数から成る。(1)軌道半長径a,(2)軌道の離心率e,(3)軌道傾斜i,(4)昇交点黄経Ω,(5)近日点引数ω,(6)近日点通過の日時T。月や人工衛星の運動ではωは近地点引数,Tは近地点通過の日時と呼ばれる。また一般の衛星の運動では,近地点を近木点(木星の衛星の場合)や近土点(土星の衛星の場合)で置き換えた用語が使われる。軌道の半長径は,ケプラー運動の軌道となる楕円の長径の半分であって,楕円の大きさを与える。離心率は楕円の形を定めるパラメーターで0から1までの値をとる。半長径がa,離心率がeの楕円の中心と焦点との距離はa×eで与えられる。一方,この楕円の短径はで与えられる。eが0.1より小さいとき,短径は長径と0.5%以下しか違わないのでその形はほとんど円である。しかし中心と焦点とのずれは100e%であって火星では目だつ。離心率は焦点が中心を離れる割合を意味する。軌道傾斜は天体の軌道面が基準面となす傾斜角である。基準面としては,太陽を公転する天体では黄道面が,衛星では母惑星の赤道面や軌道面が,また人工衛星では地球の赤道面が用いられる。いずれの場合も,昇交点において反時計まわりに0~180度と測られる。軌道傾斜が90度より大きいときは逆行軌道となる。昇交点黄経は昇交点の黄経で,春分点から昇交点まで西から東の向きに0~360度と測られる。近日点引数は昇交点から近日点の方向まで,軌道面に沿って運動の向きに測った角度で,0~360度と測られる。最後に近日点通過の日時は,多数回の近日点通過のどれか一つを指定する。半長径から近日点引数までの5要素で軌道は完全に定められる。第6要素は軌道上の天体の位置を定めるのに必要なものである。なお,半長径とともに平均運動nを軌道要素に数えるのがふつうである。ケプラーの第3法則によって平均運動は半長径と独立ではないが,平均運動は公転周期を観測して高い精度で求めることができる。また近日点引数の代りに,近日点黄経ωを使うこともある(ω=Ω+ω)。すい星の運動では,軌道要素として半長径の代りに,近日点と太陽までの距離である近日点距離qが用いられる。周期すい星では公転周期Pも軌道要素に数えられる。
執筆者:堀 源一郎
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