地所質入書入規則(読み)じしょしちいれかきいれきそく

改訂新版 世界大百科事典 「地所質入書入規則」の意味・わかりやすい解説

地所質入書入規則 (じしょしちいれかきいれきそく)

1873年(明治6)1月17日に太政官布告として公布された土地担保金融に関する法令。この法令は,1872年田畑売買解禁の布告および地券交付によりすべての土地に私的土地所有権が付与されたのにともなって制定された。おもな内容として,(1)土地金融を質入(占有担保形態)と書入(非占有担保形態)に区分し,前者の場合には地券を金主に渡すことを義務づけ,(2)年季は3年以内に限定し,(3)書入では,土地に担保余力があれば,さらに2番,3番の書入を認め,(4)規則公布時に存在する質入・書入は,すべて規則に準じて73年7月までに改約する(のちに,前約の期間を据え置くことに改正)こととしていた。この規則の書入についての規定は,73年8月23日の太政官布告〈動産不動産書入金穀貸借規則〉で補強され,これにともない質入書入規則も,74年5月に一部改正された。すなわち,担保地の滅失に対し,貸主に代質・増質の請求権を認め,代質・増質物のないときは訴訟のうえ,〈身代限〉処分にすると定め,担保地の価値滅失が債権に影響を及ぼさない方針を明確にした。また,74年1月の規則改正と75年4月太政官布告53号とによって,町村戸長が公証した地所質入書入証書は負債主の身代限に際し先取りの特権が認められた。このような手厚い債権の保護は,フランス民法を参照して,近代法の原則をとりいれることでなされたものである。

 こうして,土地担保金融は,法的保障が与えられ,これによって資本の増殖それ自体を目的とする金融活動が農村でも活発化することになった。一方土地を担保として資本を造出し,土地所有拡大や他産業部門への投資を図る道が開かれ,資本主義発展の基礎をつくった。しかし,他方でこの法令は,在来の土地・金融慣行によって認められていた負債主側の買戻権・請戻権を否定することによって,耕作農民の没落を容赦なく推し進める条件をつくりだした。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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