堀木訴訟(読み)ほりきそしょう

改訂新版 世界大百科事典 「堀木訴訟」の意味・わかりやすい解説

堀木訴訟 (ほりきそしょう)

朝日訴訟についで,第2の生存権保障訴訟と呼ばれた訴訟。国民年金法の無拠出障害福祉年金を受けている,全盲で,離婚中の身で2人の子供を扶養していた堀木文子が,1970年,児童扶養手当法に基づく児童扶養手当の支給を福祉事務所に申請したところ,児童扶養手当法の規定中に公的年金給付と児童扶養手当との併給を禁止する規定があるからという理由で,その申請は却下され,原告は,行政不服申立をしたがこれも却下された。そこで原告は,この併給禁止は憲法25条の生存権保障に違反しており,また,生別母子世帯の場合にこの併給禁止が適用され,生別父子世帯の場合に併給が容認されている状況は憲法14条の平等保障原則に反するとして,併給禁止規定の違憲とあわせてこの却下処分の取消しを求めて,同年この訴訟を提起した。第一審判決(1972)は,原告のような生別母子世帯にかかわる併給禁止規定は社会的にみて不合理な差別であって憲法14条に違反するとし,無効であるとした(原告勝訴)。第二審判決(1975)は憲法25条について,その1項を最低限度の生活保障義務にかかわる部分,2項を国の社会保障などの施策による生活向上の努力義務にかかわる部分と分けて解釈する立場をとったうえで,原告主張の二つの給付法を2項にかかわる制度とし,立法裁量によってその併給を禁止することも許されるとした。また併給禁止は憲法14条にも違反するものでないとした(原告敗訴)。原告は,上告し,最高裁判所は大法廷判決(1982)において,25条全体をプログラム規定とし,これによる制度の具体化については立法府裁量を幅広く認める解釈をとることによって,併給禁止も違憲ではないとする判断を下し,また憲法14条にも反するものでないとして,原告の主張を棄却した。またこの判決は,社会保障立法に対する司法審査の可能性を認めたが,それにきびしい限定を付した。なお,国は,本訴訟係属中に法改正を行って,この事件のような併給を認めた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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