児童扶養手当(読み)じどうふようてあて

共同通信ニュース用語解説 「児童扶養手当」の解説

児童扶養手当

両親の離婚死亡などで一方の親からしか養育を受けられなかったり、両親のいずれかに重度障害があったりする子どもがいる低所得の家庭に支給される。子どもが18歳に達した年度末まで受給でき、約4万円の基本額と、子どもの数に応じた加算分がある。2010年から父子家庭も対象となり、12年にはドメスティックバイオレンス(DV)で裁判所から保護命令が出された場合も受給できるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「児童扶養手当」の意味・わかりやすい解説

児童扶養手当
じどうふようてあて

児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)に基づき、ひとり親家庭の父または母、祖父母などの養育者に対し、生活の安定や子供の福祉増進を目的として支給される手当。ひとり親家庭以外では、父や母が一定程度の障害をもつ場合や、父や母が配偶者からの暴力により裁判所から保護命令を受けている場合にも支給される。対象となるのは18歳までの児童で、児童に中程度以上の障害がある場合には支給年齢が20歳までに引き上げられる。手当の月額は児童の数や受給資格のある人の所得に応じて異なる。

 支給額は物価水準に従って変動するが、2019年(令和1)11月時点の児童扶養手当の月額は以下のようになっている。

(1)児童1人 全額支給4万2910円、一部支給4万2900~1万0120円(所得に応じて決定)。

(2)児童2人目の加算額 全額支給1万0140円、一部支給1万0130~5070円(所得に応じて決定)。

(3)児童3人目以降の加算額(1人につき) 全額支給6080円、一部支給6070~3040円(所得に応じて決定)。

 また、受給資格者の所得(収入から控除額を差し引いた金額)の制限限度額(以下、限度額と略す)は、下記のように税法上の扶養親族等の人数によって決められている。

(1)0人 全額支給の限度額49万円、一部支給の限度額192万円。

(2)1人 全額支給の限度額87万円、一部支給の限度額230万円。

(3)2人 全額支給の限度額125万円、一部支給の限度額268万円。

(4)3人 全額支給の限度額163万円、一部支給の限度額306万円。

以降扶養親族人数が1人増すごとに、限度額に38万円が加算される。受給には市区町村への申請が必要である。

 児童扶養手当は母子家庭を対象として、1961年(昭和36)に創設された。2017年度(平成29)末における受給者数は97万3188人で、そのうち母が88万6973人、父は5万3470人、それ以外の養育者が3万2745人である。受給者数は1975年ごろから増加してきたが、2012年度の108万3317人をピークに減少に転じている。受給額においては、2008年度から受給資格者の所得に応じた支給限度額が設けられた。その後、支給対象が拡大され、2010年に父子家庭、2012年には配偶者からの暴力で保護命令の出ている家庭も支給対象となった。さらに、2014年12月からは、児童を養育する祖父母などの公的年金受給額が児童扶養手当よりも低いとき、その差額を受給できるようになった。また、2016年8月分から実施された児童2人目以降の金額の引上げは、2人目については36年ぶり、3人目以降については22年ぶりである。2017年からは物価の上下にあわせて支給額が変わる物価スライド制が、2人目以上の場合の加算額を含めて全面的に導入されている。また、2019年11月分から、それまで4か月分年3回払いであったが、2か月分年6回払いに改められた。

[編集部 2021年2月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「児童扶養手当」の意味・わかりやすい解説

児童扶養手当 (じどうふようてあて)

児童の心身のすこやかな成長を図るため,父母が婚姻を解消して生別している場合,父が死亡したり廃疾・生死不明状態にある場合など,父と生計を別にしている状態にある児童の母または養育者に対して,母子福祉対策の一環として,児童扶養手当法(1961公布)に基づいて国が支給する手当である。支給対象児童は18歳未満の児童であるが,児童が心身障害をもつ場合に限り,20歳まで適用される。支給手当額は1996年4月現在,月額で児童1人の場合は月額4万1390円,児童2人の場合は2人目の児童に5000円の加算,3人目以上の場合は児童1人につき3000円の加算となる。手当の性格は年金の補完制度であるので,児童が日本国内に住所を有しない場合や,父または母の死亡によって公的年金が給付された場合には給付されない。手当の支給については所得制限がある。申請は,区市町村の役場が窓口となり,支払は郵便局窓口で行う。手当の支給認定は都道府県知事が行う。

 児童扶養手当制度に類似のものに特別児童扶養手当がある。これは児童本人が1級および2級の重度の障害をもつ場合,在宅扶養施策の一環として給付される手当である。また社会保障制度としての児童手当もあるが,いずれも児童扶養手当とは別枠の所得保障体系である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「児童扶養手当」の意味・わかりやすい解説

児童扶養手当
じどうふようてあて

ひとり親家庭などに支給される手当。1961年成立した児童扶養手当法に基づく。ひとり親家庭などの生活の安定と自立の促進に寄与し,子供の福祉の増進をはかることを目的とする。父母の離婚,死亡,障害などにより,父母から養育を受けられない子供について,その子供を監護する父,母,または父母に代わって子供を養育する者(養育者)に支給される。支給対象となる子供は,18歳に到達して最初の 3月31日までの間にある者と,20歳未満の政令の定める程度の障害の状態にある者で,支給額は親または養育者の所得に応じた額。

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世界大百科事典(旧版)内の児童扶養手当の言及

【児童手当】より

…児童手当制度は児童を養育している者に現金給付をすることにより,家庭における生活の安定に寄与するとともに,次代の社会を担う児童の健全な育成と資質の向上に資することを目的とする制度である。児童手当は社会保障制度の重要な一部門を占めるものであり,企業福祉の一環として現在多くの民間企業で支給されている家族(扶養)手当とはその性格を異にする。児童手当は,一方では両親が児童養育の責任を果たすための補助として,他方では児童の育成に社会が積極的に参加し,新しい責任を引き受けたものとしてみられるべきである。…

※「児童扶養手当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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