改訂新版 世界大百科事典 「プログラム規定」の意味・わかりやすい解説
プログラム規定 (プログラムきてい)
国政の目標ないし指針を掲げて,国の政治的・道徳的義務を定める憲法規定をいう。ドイツでワイマール憲法の社会的基本権を説明するのに用いられた。国民はプログラム規定によって保障された権利を政治的要求として主張することはできるが,司法的救済を伴う法的権利として主張することはできないとされ,日本国憲法25条の生存権保障規定は,権利の内容が明確でなく,その実現が予算・財政の問題と関連して国の裁量にゆだねられていること,および資本主義体制の下では権利実現の実質的前提が欠けていることを理由に,プログラム規定と解されてきた(朝日訴訟。1967年最高裁判決)。教育を受ける権利(日本国憲法26条)や勤労の権利(27条)も同様である。しかし,これらの社会的基本権についても,純粋なプログラムと解するのではなく,これになんらかの法的権利性を認め,司法過程における権利の実現をはかる考え方が強く主張されている。
執筆者:阿部 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報