日本大百科全書(ニッポニカ) 「塘沽協定」の意味・わかりやすい解説
塘沽協定
たんくーきょうてい
1933年(昭和8)日本軍の熱河(ねっか)作戦後に結ばれた日中停戦協定。同年5月31日岡村寧次(やすじ)関東軍参謀副長と熊斌(ゆうたん)北平軍事分会総参議によって調印された。おもな内容は、〔1〕中国軍の延慶(えんけい)、通州(つうしゅう)、蘆台(ろだい)を結ぶ線以西および以南への撤退、〔2〕日本軍による中国軍撤退の確認、〔3〕日本軍の長城(ちょうじょう)の線への撤退、〔4〕長城線以南と〔1〕項の線以北・以東地域の非武装化、などである。関東軍主導のもとに結ばれたこの協定は、満州事変による日本の中国東北占領を既成事実として中国側に黙認させたばかりでなく、華北における有力な軍事的拠点を日本軍に与え、その後の華北分離工作の重要な布石となった。
[鈴木隆史]
『歴史学研究会編『太平洋戦争史2』(1972・青木書店)』