塘沽協定(読み)たんくーきょうてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塘沽協定」の意味・わかりやすい解説

塘沽協定
たんくーきょうてい

1933年(昭和8)日本軍の熱河(ねっか)作戦後に結ばれた日中停戦協定。同年5月31日岡村寧次(やすじ)関東軍参謀副長と熊斌(ゆうたん)北平軍事分会総参議によって調印された。おもな内容は、〔1〕中国軍の延慶(えんけい)、通州(つうしゅう)、蘆台(ろだい)を結ぶ線以西および以南への撤退、〔2〕日本軍による中国軍撤退の確認、〔3〕日本軍の長城(ちょうじょう)の線への撤退、〔4〕長城線以南と〔1〕項の線以北・以東地域の非武装化、などである。関東軍主導のもとに結ばれたこの協定は、満州事変による日本の中国東北占領既成事実として中国側に黙認させたばかりでなく、華北における有力な軍事的拠点を日本軍に与え、その後の華北分離工作の重要な布石となった。

[鈴木隆史]

『歴史学研究会編『太平洋戦争史2』(1972・青木書店)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「塘沽協定」の解説

塘沽協定
タンクーきょうてい

北支停戦協定とも。1933年(昭和8)5月末日,河北省塘沽で締結された日中停戦協定。満州事変で東北三省を占領した関東軍は33年3月に熱河省を占領,4月中旬には長城線を越えてさらに南下を企てた。これをみた北平政務整理委員会の黄郛は密かに停戦交渉を進め,軍事委員会分会の熊斌(ゆうひん)中将と岡村寧次(やすじ)関東軍参謀副長との間で日本の要求どおりの停戦協定に調印。内容は,(1)中国陸軍は延慶・通州・蘆台を結ぶ線以西および以南に撤退する,(2)日本軍は長城線に復帰する,(3)両軍間は非武装化する,(4)撤兵地域の治安維持は中国警察が担当するなどであり,満州国の国境が最終的に確定した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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