(読み)けん

改訂新版 世界大百科事典 「塤」の意味・わかりやすい解説

塤 (けん)

中国・朝鮮雅楽祭祀楽(孔子廟楽,朝鮮では文廟楽)に用いる球型の笛で,オカリナ一種。吹き口はまるい頂点にあり,上から吹く。指孔は5孔で,後ろに両親指用の2孔,前に左右人差指と右中指用に3孔ある。指孔全部閉じて吹いたときにハ音を出し,全部開けたときにロ音を出すように作る。中国河南省二里岡遺跡から,日本では山口県綾羅木郷(あやらぎごう)遺跡から土笛が出土している。石笛や土笛は周代から使用が認められる。横笛の篪(ち)とともに吹く。朝鮮には12世紀ころ中国から伝来したが,15世紀から陶器製に変わった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塤」の意味・わかりやすい解説


けん

中国、朝鮮で用いた土製の笛。壎(くん、あるいは、かん)とも書く。土を焼いてつくり、石器時代の石(いわ)笛、土笛を起源とする。外形は底が平らな球形あるいは卵形で、内部は空洞である。上端に吹口、胴には5~8個の指孔があり、息を当てる角度を変えグリッサンドさせて演奏する。漢代以降清(しん)代まで雅楽の登歌(とうか)、楽懸(がくがかり)に用い、また俗楽にも用いた。宋(そう)代と明(みん)代には朝鮮に伝わり、孔子廟(びょう)の祭祀(さいし)楽に用いられた。

[卜田隆嗣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【中国音楽】より


[第1期]
 中国固有の楽器が出そろう時期で,分類法が考案されるほどの豊富な種類をもち,それによって楽理も整っていった。まず吹奏楽器としては,現存最古の陶製で1孔の(けん)がある。前4000年ころとされるが,以後,孔をふやして,殷代後期の前14~前12世紀には5孔塤となり,すでに1オクターブ中の11半音が吹き出せた。…

※「塤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android