日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
塩化ベンゼンジアゾニウム
えんかべんぜんじあぞにうむ
benzenediazonium chloride
芳香族ジアゾニウムの一つ。アニリンの塩酸溶液を冷やしながらそこに亜硝酸ナトリウムを加える(ジアゾ化反応)と水溶液として得られる無色の結晶。
結晶を乾燥、加熱すると爆発するので、融点測定はできない。一般的に、合成した塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液は、そのまま次の反応に用いられる。きわめて不安定な化合物で窒素を放出して反応しやすい。ジアゾ基-N2+は種々の官能基で置換されやすく、よく利用される。たとえば、酸性水溶液を加熱するとヒドロキシ基-OHで置換されフェノールが得られる。そのほか、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基-CNなどで置換可能である。弱アルカリ性でフェノールと反応させるとパラ・オルト-オキシアゾベンゼンが得られる(ジアゾカップリング反応)。芳香族アミンとも同様の反応を行う。ジアゾ染料の中間体として重要である。
[谷利陸平]