改訂新版 世界大百科事典 「染料中間体」の意味・わかりやすい解説
染料中間体 (せんりょうちゅうかんたい)
intermediate
原料から出発して最終製品の染料に至る製造工程の中間につくられる物質。染料中間物ともいう。一例として酸性染料のオレンジⅡを例にとると,ベンゼンおよびナフタレンを出発原料として,それぞれニトロ化,アミノ化,スルホン化,ヒドロキシル化,ジアゾ化などの単位操作を経てジアゾベンゼンスルホン酸およびβ-ナフトールがつくられ,最終的に2者をカップリングして染料が生成する(図)。このように単位操作により中間につくられるニトロベンゼン,アニリン,スルファニル酸,β-ナフタレンスルホン酸,β-ナフトールなどは染料中間体である。歴史的にみると,これらの中間体は染料の合成とともに発展し個々の位置を獲得したため染料中間体と呼ばれるようになったが,大部分はベンゼン,トルエン,ナフタレン,アントラセンなどの芳香族化合物を出発原料としている点に特徴がある。現在では,これら芳香族系の中間体は単に染料合成に使われるばかりでなく,医薬品,香料,殺虫剤,農薬,食品添加物,電子産業用素材などいわゆるファインケミカルスの製造にも使用される。一般に有機合成化学工業では,これらの中間体を品質よく,かつ合理的に製造することが重要で,原料事情の変遷,製造工程の合理化,公害問題の処理技術などにより,中間体製造技術も大きな影響を受けた。
執筆者:新井 吉衞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報