改訂新版 世界大百科事典 「士官学校事件」の意味・わかりやすい解説
士官学校事件 (しかんがっこうじけん)
1934年に起こった陸軍の統制派と皇道派との抗争事件。十一月事件とも呼ばれる。同年8月陸軍士官学校の生徒隊中隊長に就任した辻政信大尉は,腹心の士官候補生を使って,士官候補生に影響を及ぼしていた皇道派青年将校村中孝次大尉(陸軍大学校在学中)から,皇道派が11月27日召集の第66臨時議会の前後にクーデタを計画しているという情報を探りださせた。辻はこの情報を憲兵司令部および先輩の片倉衷少佐に注進し,11月20日村中や磯部浅一一等主計らが緊急逮捕された。35年3月第1師団軍法会議は証拠不十分として不起訴処分の決定を下したが,村中,磯部ら3名は停職となった。村中らははじめから事実無根と主張し,片倉,辻らを誣告罪(ぶこくざい)で告訴したが,それが取りあげられないので,7月に《粛軍ニ関スル意見書》をだし,統制派を糾弾した。陸軍省は8月村中,磯部を免官し,統制派と皇道派の対立はいちだんと激化した。
→相沢事件
執筆者:江口 圭一
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