売勲事件(読み)ばいくんじけん

改訂新版 世界大百科事典 「売勲事件」の意味・わかりやすい解説

売勲事件 (ばいくんじけん)

田中義一政友会内閣の賞勲局総裁天岡直嘉が叙勲を得ようとする実業家から収賄した事件。賞勲局疑獄ともいう。私的に巨額な負債を負って苦しんでいた天岡は,1928年11月の天皇即位大礼を機に行われた大幅な叙勲に際し,東京商工会議所会頭藤田謙一,日活社長横田永之助,日魯漁業会長堤清六らから叙勲の報酬として収賄した。この事実は浜口雄幸民政党内閣のもとで摘発されたが,勲章を売るという衝撃的な事件のため,政党内閣の下で相次いだ他の疑獄事件とあわせて,既成政党財界腐敗世間に強く印象づけることとなった。第1審判決は天岡懲役2年,藤田1年6月などであり,第2審でも有罪で,35年大審院は上告棄却を決定した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「売勲事件」の意味・わかりやすい解説

売勲事件
ばいくんじけん

政友会田中義一内閣の賞勲局総裁天岡直嘉(あまおかただよし)が叙勲決定に際して実業家から収賄した事件。賞勲局疑獄ともいう。1928年(昭和3)11月の天皇即位大礼を期して大幅な叙勲が行われることになっていたが、巨額の負債を抱えていた天岡は、その権限を利用して私設秘書役の鴫原亮暢と謀り、叙勲を得ようとする実業家に働きかけ多額の賄賂(わいろ)を受け取った。事件は民政党浜口雄幸(おさち)内閣にかわったのちに発覚。官権金権癒着、腐敗を示すこの事件は、同じ時期の鉄道疑獄事件とともに世論の激しい非難を浴びた。33年5月の第一審判決では、天岡は懲役2年、鴫原は懲役1年6月、また起訴された民間人らは贈賄罪で懲役または罰金刑を言い渡された。34年11月の控訴審でも有罪、35年9月大審院は上告棄却を決定している。

[北河賢三]

『我妻栄他編『日本政治裁判史録 昭和・前』(1970・第一法規出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「売勲事件」の意味・わかりやすい解説

売勲事件
ばいくんじけん

勲章涜職事件」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の売勲事件の言及

【疑獄】より

…大正末から昭和初期の政党政治は,二大政党の交代による疑獄の顕在化をもたらした。満鉄疑獄事件(1921),松島遊廓疑獄(1926),陸軍機密費事件(1926),朝鮮総督府疑獄(1929),売勲事件(1929),五私鉄疑獄(1929)など,政友・民政両党をまきこんだ疑獄は枚挙にいとまがない。その後,斎藤実挙国一致内閣を崩壊させた帝人事件(1934)は,事件そのものが〈空中楼閣〉とされ全員無罪となった。…

※「売勲事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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