① 国家に対する勲功・功労を表彰して授けられる記章。あるいは、公共のためにつくした事柄や国民的栄誉をたたえて国家から授けられる記章。日本では菊花・桐花・旭日・瑞宝・宝冠などの種類がある。昭和一二年(一九三七)文化勲章が設けられ、同二二年武功に対して与えられた金鵄(きんし)勲章が廃止された。外国では、イギリスのビクトリアやガーター、フランスのレジオン‐ドヌール、デンマークのダンネブローなどが有名。
古代ギリシア・ローマでは名誉の顕彰には記念碑を建てるほか,冠,腕輪,首飾,勲章に近い金属盤等が与えられた。十字軍の時代にはパレスティナの聖遺跡を守る特別の騎士団(騎士修道会)が種々つくられたが,騎士を顕彰するのに聖ミカエル騎士団,テンプル騎士団,ヨハネ騎士団,マルタ騎士団などに抜擢し,それぞれの騎士団の記章をつけることを許した。騎士でない平民の軍功に与えられた騎士号として最も古いものはフランスのルイ14世が1693年に制定した聖王ルイ騎士勲章Ordre St-Louisである。新教徒は聖人崇拝をしないので軍功章Méritemilitaireが新たに1759年に制定されたが,フランスでは大革命後の91年貴族制度とともにすべての勲章も廃止された。しかし1802年にナポレオン1世はフランスの繁栄に寄与した人物を集めた〈名誉軍団〉(レジヨン・ドヌールLégion d'honneur)を制定し,騎士,士官,司令官等5階級の勲章をつくり,今日に至っている。イギリスで最も古いガーター勲章は,1347年フランスのカレー市占領祝賀会のダンスの最中,女官が靴下留を落としたのをエドワード3世が拾って自分の膝につけたのが起源とされる。The Most Noble Order of the Garterは48年に制定され,1417年にはヘンリー5世によってガーター紋章官Garter King of Armsが置かれた。1867年(慶応3)パリ万国博に琉球国として参加した薩摩藩は,パリの勲章店で島津家の紋章をかたどった勲章をつくらせナポレオン3世と関係高官に贈った。