開高健(かいこうたけし)の長編小説。1971年(昭和46)10月『新潮』に400枚を一挙掲載。加筆した単行本は72年3月、新潮社刊。前作の『輝ける闇』(1968.4、新潮社刊)のテーマが「私にとってのベトナム戦争」であったのに対して、『夏の闇』は同じ構想を受け継いで、徒労、倦怠(けんたい)、焦燥に塗り込められて抜け道のなくなった戦後30年目の日本人の今日の姿を、旧西ベルリンに滞在中の中年作家に託して濃密に描いたもの。「昔の女」の下宿に転がり込んだ男は外出もせず、ただひたすらに眠り、貪欲(どんよく)にむさぼり食い、「性」におぼれ込むだけである。巻末で男はダルな日常からの脱出を図り、ベトナム戦争取材の旅に賭(か)けようと決意するが、はたして人間回復の日々は訪れるのかどうか。このテーマは三部作にまとめられる予定で、第三部は未刊。
[古林 尚]
『『夏の闇』(新潮文庫)』
東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新