夏の闇(読み)ナツノヤミ

デジタル大辞泉 「夏の闇」の意味・読み・例文・類語

なつのやみ【夏の闇】

開高健長編小説。昭和46年(1971)「新潮」誌に発表。「輝ける闇」に続きベトナム戦争題材とした作品で、没後刊行の「花終わる闇」とともに闇三部作をなす。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「夏の闇」の意味・わかりやすい解説

夏の闇
なつのやみ

開高健(かいこうたけし)の長編小説。1971年(昭和46)10月『新潮』に400枚を一挙掲載。加筆した単行本は72年3月、新潮社刊。前作の『輝ける闇』(1968.4、新潮社刊)のテーマが「私にとってのベトナム戦争」であったのに対して、『夏の闇』は同じ構想を受け継いで、徒労倦怠(けんたい)、焦燥に塗り込められて抜け道のなくなった戦後30年目の日本人の今日の姿を、旧西ベルリンに滞在中の中年作家に託して濃密に描いたもの。「昔の女」の下宿に転がり込んだ男は外出もせず、ただひたすらに眠り、貪欲(どんよく)にむさぼり食い、「性」におぼれ込むだけである。巻末で男はダルな日常からの脱出を図り、ベトナム戦争取材の旅に賭(か)けようと決意するが、はたして人間回復の日々は訪れるのかどうか。このテーマは三部作にまとめられる予定で、第三部は未刊

古林 尚]

『『夏の闇』(新潮文庫)』

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