日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
外国子会社配当益金不算入制度
がいこくこがいしゃはいとうえききんふさんにゅうせいど
Foreign Dividend Exclusion
外国子会社から日本の親会社へ払われた配当金の95%を非課税とする制度。日本企業が外国であげた利益を日本へ還流させ、国内での新規投資や雇用拡大を促し、国内経済を活性化するねらいで、2009年度(平成21)の税制改正で導入された。対象は、日本の親会社が株式の25%以上を6か月以上保有している海外子会社で、アメリカなど日本と租税条約(二重課税排除条項)を結んでいる外国の子会社の場合、株式の25%未満の一定割合(アメリカなら10%以上)を保有する子会社も対象となる。海外子会社から日本の親会社へ払われた配当(源泉税控除前)の95%を所得の計算上、益金不算入にでき、配当金の5%のみが課税を受ける。対象は配当のみで、利子、使用料、外国支店利益は対象外である。2015年、経済協力開発機構(OECD)と主要20か国政府・地域(G20)による国際課税ルールの共通化計画「税源侵食と利益移転(BEPS)プロジェクト」は世界各国の税制の違いを利用した課税逃れを防ぐため、最終報告書をまとめた。これを受け2016年4月から、外国子会社の配当がその外国で損金算入された場合には、その配当は外国子会社配当益金不算入制度の対象外とされ、配当全額が益金に算入(課税)されるよう改正された。これにより国際的な二重非課税は排除されることになった。
日本では、内外の二重課税を排除するため間接外国税額控除制度がとられてきたが、海外子会社が稼いだ利益を配当によって日本に還流させると、高い日本の税率によって、企業には税金の追加負担が生じるのが実態であった。日本企業のグローバル活動を支援するため、外国子会社配当益金不算入制度は企業の追加負担を軽くして、海外子会社利益の国内還流を促すねらいがある。国際経済交流財団の調査によると、外国子会社の利益を日本に配当還元していた企業は28%であったが、外国子会社配当益金不算入制度の導入後は46%に高まった。
[矢野 武 2018年10月19日]