外国為替証拠金取引(読み)ガイコクカワセショウコキントリヒキ(英語表記)foreign exchange margin trading

デジタル大辞泉 「外国為替証拠金取引」の意味・読み・例文・類語

がいこくかわせ‐しょうこきんとりひき〔グワイコクかはせ‐〕【外国為替証拠金取引】

証拠金証券会社などに預託して、外国通貨売買取引を行うこと。証拠金の何倍もの取引が可能で、売買代金の総額ではなく、差額授受による差金決済が行われる。外国為替保証金取引。FX取引。FX(foreign exchange)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外国為替証拠金取引」の意味・わかりやすい解説

外国為替証拠金取引
がいこくかわせしょうこきんとりひき
foreign exchange margin trading

FX取引ともよばれ、外国の通貨に投資する手段の一つ。日本では1998年(平成10)4月の「外国為替及び外国貿易法」改正により誕生した。インターバンク市場における外国為替取引の売買単位を小口化し、さらにより少額の証拠金を担保とすることで個人投資家の参加を可能にした金融商品である。

 2国間の為替を売買することで得られる収益は、キャピタル・ゲインインカムゲインとに大別される。キャピタル・ゲインは為替変動に伴い発生する為替差益であり、インカム・ゲインは通貨間の金利差によりもたらされる。この金利差はスワップポイントともよばれ、高金利通貨を購入して低金利通貨を売却することでその差額を受け取る。ただし、これら収益の源泉は、それぞれ逆の場合にはキャピタル・ロスとインカム・ロスが生じることとなる。

 FX取引では、一定の証拠金を差し入れれば、その証拠金の何倍かの取引を行うことができる。つまり、レバレッジ(外部資金の導入により自己資金の投資収益の向上を図ること)を利用した投機的な取引である。たとえば、100万円の元手を証拠金としてレバレッジを100倍としてドルに投資した場合、1円円安に動けば証拠金と同額の100万円を手中にすることができる。逆に、1円の円高は100万円の損失をもたらすこととなる。また、評価損失額が拡大する過程では、最低委託証拠金率を維持するために追い証(追加証拠金)の差入れが必要となる場合もある。レバレッジの倍率は投資家が選択することができるが、高収益がねらえる半面、高いリスクにもさらされている。FX取引に伴うリスクには、為替変動や金利変動による本来的なものに加えて、取引先業者との相対(あいたい)取引であるケースでは、業者が倒産した場合などに預け入れた資産が返還されないかもしれないという信用リスクも付随する。

[高橋 元]

『植月貢・野本哲嗣著『図解雑学 FX(外国為替証拠金取引)のしくみ』(2008・ナツメ社)』『松田哲著『外国為替・FXのしくみ――損得を生み出す取引市場のカラクリとは?』(2009・PHP研究所)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「外国為替証拠金取引」の解説

外国為替証拠金取引

取扱業者にあらかじめ預けた証拠金(マージン・マネー)の、例えば約10〜20倍程度の元本で外国為替取引の売買を行う取引。日本では、1998年の外為ビッグバンで解禁され、外国為替ブローカー、商品先物取扱会社、証券会社等に加え、専業業者の参入が相次いだ。少額の証拠金で高いリターンの運用が可能だが、当然これに伴うリスクも高い。実際に高齢者を中心に悪質業者による被害が多数発生して大きな問題となった。改正金融先物取引法が2005年7月に施行され、外国為替証拠金取引が金融先物取引として新しく規制対象に加えられ、これを扱う金融先物取引業者の登録が義務づけられた。また、断定的判断の提供に加え、勧誘を要請していない顧客への勧誘等が禁止された。しかし、リスクの高い取引形態であることに変わりはない。近年、外国為替証拠金取引で高金利通貨買い・円売りの円キャリートレードを行うことが日本の個人投資家層でブームとなり、円安要因の1つとして注目されるようになった。ただし、円売り持ち高が積み上がった後、円買い戻しの動きで急激に円高に相場が振れることがしばしば起こり、損失を被る投資家も増えている。

(絹川直良 国際通貨研究所経済調査部長 / 竹中正治 (財)国際通貨研究所経済調査部長 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外国為替証拠金取引」の意味・わかりやすい解説

外国為替証拠金取引
がいこくかわせしょうこきんとりひき

一定の金額を証拠金(マージン)として業者に預け,外国通貨を売買する外国為替取引。通称 FX; Foreign Exchange。外貨保証金取引ともいう。預けた証拠金の一定の倍率で投資できるため,少額の運用資金で数倍から数百倍の取引を行なうことができる。この元本と投資額の比率をレバレッジという。またウェブサイト上にオンライン口座を開設することで,いつでも取引可能になる。為替変動と金利差によって利益や損失が生じ,相場が有利な場合は収益が大きい反面,元本・収益は保証されず,損失のリスクも大きい。そのため損失が拡大しないように証拠金比率を割り込んだ時点で保持しているポジション(→為替持高)が自動的に清算される(ロスカット)など,リスク管理のシステムが設けられている。個人が FXで得た利益は雑所得として課税対象となる。

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