改訂新版 世界大百科事典 「多形滲出性紅斑」の意味・わかりやすい解説
多形滲出性紅斑 (たけいしんしゅつせいこうはん)
erythema multiforme
exsudativum multiforme
主として四肢に滲出傾向のつよい紅斑が多発する皮膚疾患。女性に多くみられる。発疹は多彩で症例や病気により異なり,小型丘疹状のものから,環状,中心退色,辺縁がやや膨隆する定型的な滲出性紅斑,あるいは出血,糜爛(びらん),水疱を示すものなどがある。原因のまったくわからないいわゆる特発性の軽症型(ヘブラ型)と,全身症状を伴うあるいは全身疾患の一部分症としての重症型に大別される。ヘブラ型はほとんど全身症状を伴わず,発疹は小指頭大の滲出性の紅斑で,四肢に多発する。ともに女性に好発し,春秋に多く,しばしば再発する。重症型では,発熱,関節痛などを伴い,皮疹もやや大型で,顔面,体幹にも生じる。粘膜疹を伴うこともあり,最重症型はスティーブンズ=ジョンソンStevens-Johnson症候群と呼ばれる。原因は多岐にわたり,ウイルスや細菌感染,薬剤内服などが挙げられるが,不明の場合が少なくない。治療に当たっては原因検索が肝要であり,特発性では非ステロイド性消炎剤を内服,外用,重症型では副腎皮質ホルモン剤を内服する。
執筆者:西川 武二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報