内科学 第10版 「関節痛」の解説
関節痛(症候学)
一般に関節痛とは可動性をもった滑膜関節に生じる疼痛を意味する.ほとんど動きのない半関節(恥骨結合,椎体間関節,仙腸関節など)にも疼痛を生じることがある.関節痛の原因として,変形性関節症,自己免疫疾患,代謝性疾患,感染,外傷,骨壊死,腫瘍などがあげられる.
病態生理
関節痛は滑膜や関節包などの軟部組織および骨や骨膜に分布する侵害受容器に対して,物理的刺激や化学的刺激が生じて疼痛が発生する.疼痛には心因性の機序が関連して発生することもある. 関節破壊の病態には生物学的要因(軟骨マトリックスの破壊と軟骨細胞死)と力学的要因(外傷,体重,職業,アライメントなど)に遺伝的素因も関与して発症する.
鑑別診断
成人の関節痛で最も頻度が高いのは変形性関節症であるが,全身疾患の部分症状であることもあるため,全身疾患との関連の有無に注意して診察を行うことが重要である.
1)問診:
発症時の誘因の有無(外傷など),急性か慢性か,単関節か多関節か,安静時痛か荷重時痛か,夜間痛の有無(腫瘍の可能性)などを問診する.自己免疫疾患,代謝性疾患,腫瘍などにおいては家族歴や既往歴の聴取も重要である.
2)身体所見:
局所所見として関節の腫脹,熱感,発赤,変形,可動域,不安定性,圧痛の部位の診察を行う.関節所見が単関節か多関節かも診察する.
3)臨床検査:
自己免疫疾患や感染性疾患が疑われる場合には,血液検査により炎症反応や免疫学的検査を行う.関節腫脹が著明な場合には,関節穿刺を行う.関節液の色調は変形性関節症では黄色透明のことが多い.混濁している場合には,感染や結晶誘発性関節炎を疑い,検鏡,白血球数のカウント(50000/μL以上は化膿性関節炎を考慮),培養検査を行う.関節内血腫や脂肪滴の混入は靱帯損傷や骨折を示唆する所見である.
4)画像検査:
単純X線写真により,骨および軟骨の状態を把握する(図2-44-1).軟骨,半月板,靱帯などの軟部組織の評価や腫瘍が疑われる場合にはCT,MRI,シンチグラムなどを施行する. 関節痛をきたすおもな鑑別疾患を表2-44-1にまとめた.[辻 崇・戸山芳昭]
■文献
戸山芳昭,他:整形外科研修マニュアル,南江堂,東京,2004.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報