ベーチェット病(読み)べーちぇっとびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベーチェット病」の意味・わかりやすい解説

ベーチェット病
べーちぇっとびょう

青壮年のおもに口腔(こうくう)粘膜、皮膚、眼(め)、外陰部を侵し、ほかにも関節、消化器、血管、神経系などに多くの病変反復出現する原因不明の病気である。各種の症状をまとめて1937年に報告したトルコの皮膚科医ベーチェットHulusi Behçet(1889―1948)にちなんでよばれ、ベーチェット症候群ともいう。中近東や地中海沿岸地方で注目されていたが、第二次世界大戦後に日本で急増し、今日では諸外国よりも多発しており、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている。

[小暮美津子]

眼科的所見

眼症状は男性に出現率が高く、再発性前房蓄膿(ちくのう)性虹彩(こうさい)炎を特徴とする両眼性のぶどう膜炎で、失明率が高い。虹彩毛様体炎のみが再発する前眼部型と、眼底にも病変のおこる眼底型に分けられる。前眼部型は女性に多く予後はよいが、眼底型は失明率が高く男性に多い。前眼部型の治療は虹彩毛様体炎と同じであるが、眼底型には再発を抑制する特別な療法が必要である。眼再発時にステロイド剤の内服はよくない。

[小暮美津子]

眼外所見

有痛性口腔内アフタで発症するものは約80%で、経過中に必発する症状とみてよい。口腔粘膜に生じるエンドウ大までの境界鮮明な小潰瘍(かいよう)で、周囲が赤く充血し、白色偽膜が付着している。1回に1~4個生じ、一般に瘢痕(はんこん)を残さずに1週間ほどで治癒するが、何回も再発する。単なる慢性再発性アフタとは、アフタの症状だけからは区別がつけられない。陰部潰瘍は67%にみられ、外陰部に周囲が充血して紅潮した小膿疱(のうほう)として発生し、ただちに有痛性の深い潰瘍となり、1~2週間で瘢痕を残して治癒する。

 皮膚症状は84%にみられる。結節性紅斑(こうはん)様皮疹(ひしん)は、下腿(かたい)を中心に圧痛のある紅色硬結として出没を繰り返すが、普通の結節性紅斑に比べて消褪(しょうたい)が比較的早く(4~6日)、組織学的にも特徴がある。血栓性静脈炎も下腿を中心に有痛性索状硬結として出没を繰り返す。毛嚢(もうのう)炎や痤瘡(ざそう)(にきび)様皮疹は身体各所にみられるが、注射刺入部位に1~2日後に生じる紅色小硬結、無菌性膿疱は「針反応陽性」として、診断上重要な所見である。

[土田哲也]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベーチェット病」の意味・わかりやすい解説

ベーチェット病
ベーチェットびょう
Behçet's disease

再発性前眼房蓄膿性虹彩炎ないしブドウ膜炎,アフタ性口内炎,外陰潰瘍,皮疹を主徴とする症候群。トルコの皮膚科医 H.ベーチェットが 1937年に報告した病気で,皮膚粘膜眼症候群に包括される。原因はウイルスとする説が有力であるが確証はなく,不明とされている。日本にはことに多発し,失明率が高いので,難病に指定されている。対症療法には副腎皮質ホルモンが効果がある。

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