スティーブンズ(読み)すてぃーぶんず(英語表記)Thaddeus Stevens

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スティーブンズ」の意味・わかりやすい解説

スティーブンズ(John Stevens)
すてぃーぶんず
John Stevens
(1749―1838)

アメリカの発明家。裕福な家庭で育ち、コロンビア大学で法律と技術両方の学問を学んだ。弁護士になったが、独立戦争に従軍後、ニュー・ジャージー州の財政部長などを務めた。1787年蒸気機関の改良を行い、1788年には多管汽缶を製作した。この発明を守るために国会に請願して特許法(1790)を通過させ、今日の特許制度の基礎を築いた。フィッチとラムゼーJames Rumsey(1743―1792)の開発した蒸気船に興味をもち、自ら蒸気船の開発にとりかかった。1804年、凝縮器を備えた最初の複動機関を積み込んだ蒸気船を建造し、1811年にはホボーケン―ニューヨーク間に、世界最初の蒸気船を利用した渡船場を設立した。また、鉄道建設の計画ももっており、ランカスター―フィラデルフィア間の鉄道建設の権利を獲得していたが、施工するには至らなかった。

[雀部 晶]


スティーブンズ(Wallace Stevens)
すてぃーぶんず
Wallace Stevens
(1879―1955)

アメリカの詩人。T・S・エリオット、エズラ・パウンドらと並び立つ20世紀前半の巨匠。ペンシルベニア州レディングに生まれ、ハーバード大学で文学を、ニューヨーク法律学校で法律を専攻。保険会社に入社して1934年には副社長に昇進する。その実務のかたわら詩作に励み、1923年第一詩集『足踏みオルガン』Harmoniumを発表、しばらくの沈黙の期間を経て、1935年『秩序の観念』を著す。その後は、声価も定まって次々と詩集を世に問うた。彼の詩は、穏健な詩体ではあるが、古語、難語を好んで駆使し、独自の象徴用語があってきわめて難解。観念的な瞑想(めいそう)詩を特徴とする。第一詩集ではまだ主題も表現も多彩だが、第二詩集以降は観念語がますます多用され、雑多な現実から遮断された立場に身を置いて、想像力(主体)が現実(客体)をどうとらえ、どう表現するかといった根源的な問いかけに終始するようになる。近年、脱構築(デコンストラクション)の批評理論家などが、改めて関心を寄せ始めている。

沢崎順之助

『加藤文彦・酒井信雄訳『ウォーレス・スティーヴンズ詩集 場所のない描写』(1966・国文社)』


スティーブンズ(Thaddeus Stevens)
すてぃーぶんず
Thaddeus Stevens
(1792―1868)

アメリカの政治家。バーモント州生まれ。1826年に鉄工場の共同経営者となる。ペンシルベニア州下院議員(1833~41)ののち、48年ホイッグ党から連邦下院議員になったが、その間奴隷制反対運動を一貫して続けた。53~58年を除いて死ぬまで議員を務めた。共和党結成に大きく貢献し、南北戦争が勃発(ぼっぱつ)すると、議会の共和党急進派指導者として、奴隷の解放、黒人の戦争従軍の権利、とりわけ解放黒人への土地付与を主張した。戦後は大統領の再建政策を批判し、再建合同委員会を設立して委員長に就任。67年には再建の根幹たる土地没収案を提出したが、支持されなかった。68年に大統領弾劾の動議を出したが、不成功に終わった。死後、遺志に沿って黒人、白人混合の墓地に埋葬された。

[竹中興慈]


スティーブンズ(Stanley Smith Stevens)
すてぃーぶんず
Stanley Smith Stevens
(1906―1973)

アメリカの実験心理学者。ハーバード大学教授。聴覚の実験から感覚尺度をつくる問題に取り組み、「フェヒナーの法則」を経験的事実に適合するように現代化し、ベキ(冪)法則を提唱した。感覚の大きさは刺激の物理的大きさのn乗に等しい、というのがこの法則である。指数nの値は、線の長さとか明るさなどといった個々の感覚によって異なる。感覚尺度構成の理論における業績は高く評価されている。

[今井省吾]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スティーブンズ」の意味・わかりやすい解説

スティーブンズ
Stevens, Thaddeus

[生]1792.4.4. バーモント,ダンビル
[没]1868.8.11. ワシントンD.C.
アメリカの政治家。南北戦争後の共和党急進派の最も影響力の強い指導者の一人。 1849~53,59~68年連邦下院議員。初めホイッグ党の下院議員として逃亡奴隷取締り法の強化を含む「1850年の妥協」に反対。 54~56年ホイッグ党を基盤に共和党が新たに結成されたとき,これに参加し巧みな議会工作と弁舌によって指導力を発揮,南北戦争中はグリーンバック紙幣の発行を積極的に支持した。 65年の議会では南部議員の排除を主張。再建委員会の委員として連邦憲法修正第 14条や 67年の軍事再建法を推進し,A.ジョンソン大統領と対立した。南部のプランター (大農場主) の土地没収,解放黒人へのその分配を主張したがいれられなかった。

スティーブンズ
Stephens, John Lloyd

[生]1805.11.28. ニュージャージーシュルーズベリー
[没]1852.10.12. ニューヨーク
アメリカの旅行家,マヤ,メキシコなど中部アメリカのインディアン古代文化の研究家。 1834~36年東部地中海域と東ヨーロッパを旅行。 39~40,41~42年中部アメリカのインディアン民族居住地域を旅行し,その民族社会の生活様式,マヤ文明の遺跡を研究。多数の旅行記を書く。主著『ギリシア,トルコ,ロシア,ポーランド旅行記』 Incidents of Travel in Greece,Turkey,Russia and Poland (2巻,1838) ,『中央アメリカ,チャーパス,ユカタン旅行記』 Incidents of Travel in Central America,Chiapas and Yucatan (2巻,41) 。

スティーブンズ
Stevens, Alfred

[生]1817.12.31. ブランドフォードフォーラム
[没]1875.5.1. ロンドン
イギリス新古典主義の代表的彫刻家,画家。フルネーム Alfred George Stevens。1833年から 1842年にかけてイタリアに遊学。この間の 1年をデンマークの古典主義の彫刻家ベルテル・トルバルセンと過ごす。1845~47年サマセット・ハウスの新設美術学校教授。その後ロンドンのドーチェスター・ハウスの装飾などに従事した。代表作『アニイ・コルマン夫人』(ロンドン,ナショナル・ギャラリー),セント・ポール大聖堂の『ウェリントン公記念碑』(1862)。

スティーブンズ
Stevens, Wallace

[生]1879.10.2. ペンシルバニア,レディング
[没]1955.8.2. コネティカット,ハートフォード
アメリカの詩人。ハーバード大学卒業後弁護士を経て実業界に入り,40歳を過ぎて,処女詩集『ハーモーニアム』 Harmonium (1923) を発表。その後も仕事のかたわら,『青いギターを持つ男』 The Man With the Blue Guitar and Other Poems (37) など,次々に詩集を出し,『全詩集』 Collected Poems (54) でピュリッツァー賞を受賞した。初めは機知やアイロニー,また異国的なイメージなど唯美的な特徴が目立ったが,のちにはニューイングランドのきびしい自然を好んで取上げ,瞑想的,倫理的な色調が強くなった。ほかに評論集がある。

スティーブンズ
Stephens, Alexander Hamilton

[生]1812.2.11. ジョージア,ウィルクス
[没]1883.3.4. ジョージア,アトランタ
アメリカの政治家。 1843~59年連邦下院議員,61~65年南北戦争中の南部連合の副大統領。もともと合衆国の分裂には反対で 50年の妥協案を支持し南部の分離を拒否し,ジョージア州が南部の一州として連邦から分離したとき州の方針に従ったが,戦争継続に消極的で,北部の戦争反対派の勢力台頭を期待した。 65年南部と北部の和平会議がバージニア州ハンプトンローズで開かれたとき南部連合の代表委員。南北戦争後一時投獄され,73~82年再び連邦下院議院となった。

スティーブンズ
Stevens, Siaka Probyn

[生]1905.8.24. モヤンバ
[没]1988.5.29. フリータウン
シエラレオネの政治家。鉄道労働者出身。駅長をつとめたのち鉱山労働者に転じ,1943年全鉱山労働者組合を結成,書記長となった。 45年保護領議会議員。 51~57年立法評議会員,51年国土・鉱業・労働相を経て,60年全人民会議 APC結成。 68年4月首相。 71年4月共和制移行と同時に大統領に就任。 74年大統領暗殺未遂事件が発生,反政府要人を含む8人を処刑。 77年再選。「78年憲法」を制定し,APCを唯一の合法政党とし,一党独裁体制をしいた。 85年大統領職を移譲。

スティーブンズ
Stevens, Stanley Smith

[生]1906.11.4. ユタ,オグデン
[没]1973.1.18.
アメリカの心理学者。ハーバード大学教授。感覚および心理学における尺度構成に貢献 (→べき法則 ) 。新精神物理学を提唱。主著『聴知覚』 Hearing (1938,H.デービスと共著) 。

スティーブンズ
Steevens, George

[生]1736.5.10. ロンドン
[没]1800.1.22. ロンドン
イギリスのシェークスピア学者。四つ折本の復刻『シェークスピア戯曲 20編』 Twenty of the Plays of Shakespeare (1766) を出版。 S.ジョンソンとシェークスピア全集を共編 (10巻,73,決定版 15巻,93) 。

スティーブンズ

「スチーブンス」のページをご覧ください。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報