イギリスの作家ディケンズの長編小説。1861年刊。孤児ピップが物語るその生涯の物語。寂しい田舎(いなか)で義兄夫婦と暮らしているピップに、ある日突然、名を秘した恩人から多額の財産が贈られ、ロンドンに出て紳士になる機会が与えられる。一躍金持ちになったが、世話になった素朴な義兄を恥ずかしく思うような卑しい根性に堕落する。しかし最後に謎(なぞ)の恩人が姿を現し、思いがけぬ劇的な結末を迎える。推理小説のような緊密なプロットと社会批判がみごとに結び付いた名作である。
[小池 滋]
『日高八郎訳『世界の文学13 大いなる遺産』(1967・中央公論社)』
敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...