日本大百科全書(ニッポニカ) 「大殿筋」の意味・わかりやすい解説
大殿筋
だいでんきん
尻(しり)(臀部(でんぶ)。医学表記では殿部)の特有な膨らみをつくっている筋で、ヒトではとくに発達している。骨盤の後側で、もっとも表在にあり、著しく厚く、強大な筋である。大殿筋のほぼ下層には、中殿筋と小殿筋とがあり、殿部の形をつくっている(これらを殿筋群とよぶ)。
大殿筋は、骨盤の翼(よく)状の骨部(腸骨翼)、および仙骨と尾骨の外側縁あたりからおこり、外下方に向かって走り、大腿骨(だいたいこつ)後面と腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)とに付着している。大殿筋は、直立と歩行に際しては重要な働きをもっている。すなわち、股関節(こかんせつ)の屈伸運動には、大殿筋の強い運動がかかわるわけである。下肢を後方に引くときは、この筋が大腿を後方に引いている。また、下肢を伸展位に固定すると、骨盤は鉛直に保つことができる。大殿筋の拮抗筋(きっこうきん)(対抗して働き合う筋)は腸腰筋で、この腸腰筋は股関節を屈曲させ、大腿を前方に上げる働きをもっている。したがって、下肢の上げ下げには両筋が協調して働くこととなる。
[嶋井和世]