日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
大西洋まぐろ類保存国際委員会
たいせいようまぐろるいほぞんこくさいいいんかい
International Commission for the Conservation of Atlantic Tunas
大西洋(含む地中海)のマグロ類の資源管理と持続的利用を目的とする国際機関(地域漁業管理機関)。略称ICCAT(アイキャット)。1969年発効の「大西洋のまぐろ類の保存のための国際条約International Convention for the Conservation of Atlantic Tunas」に基づいて同年に発足した。日本の加盟(条約批准)は1967年(昭和42)。本部はスペインのマドリード。マグロ、カツオ、メカジキなどの科学的調査を行い、総漁獲可能量(TAC:Total Allowable Catch)、国・地域別漁獲枠、漁獲証明制度の導入、混獲されることの多いサメのヒレだけを取って他部分を捨てるシャークフィニングの禁止などを決めている。2021年時点での条約締約国等は、日本、アメリカ、カナダ、中国、ヨーロッパ連合(EU)、モロッコなど52。世界的にマグロ類資源が激減するなか、ICCATの設立と取決めは、日本近海を含む中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)など世界の資源管理機関のモデルとなった。
クロマグロはミナミマグロと並び、もっとも高級なマグロ類とされ、刺身やすしなどに使われることから、日本では漁獲規制への関心が高い。ICCATは1999年から漁獲規制を導入したが、違反操業が横行。2010年のワシントン条約締約国会議で大西洋クロマグロの国際取引禁止が提案(決議で否決)され、その後国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧(きぐ)種に指定した。このためICCATは総漁獲量をピーク時から8割削減するなどの厳しい規制を導入。資源保護に取り組んだ結果、資源の回復が確認され、2013年から日本などの漁獲枠を徐々に拡大し、2021年には絶滅危惧種指定が外された。なお、マグロ類は広い海域を回遊するため、ICCAT以外に、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)、インド洋まぐろ類委員会(IOTC)、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の四つの国際資源管理機関がある。
[矢野 武 2022年6月22日]