天一閣(読み)てんいっかく(英語表記)Tiān yī gé

改訂新版 世界大百科事典 「天一閣」の意味・わかりやすい解説

天一閣 (てんいっかく)
Tiān yī gé

中国,明代の蔵書家范欽はんきん)が,嘉靖年間(1522-66)故郷寧波ニンポー)(浙江省)に建てた書庫。現在も書庫とともに当時の蔵書が保存されていることで有名。その管理は厳重を極め,建物は池をめぐらして火災に備え,中へ入るには一族承認を要し,書物は帯出を許されなかった。清朝の《四庫全書》編集には所蔵の473種が底本として利用され,《四庫全書》を収めた文淵閣などは天一閣をまねて作られたという。現在の蔵書は約2500種にすぎないが,みな稀少本である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天一閣」の意味・わかりやすい解説

天一閣
てんいつかく
Tian-yi-ge; T`ien-i-ko

中国,明の蔵書家范欽 (はんきん) の設けた書庫の名。浙江省ぎん県にある。范欽は字は蕘卿,嘉靖 11 (1532) 年の進士。官は兵部右侍郎となったが,蔵書家として知られ,書庫の保存に努めた。清朝の文淵閣はこれにならって建てられた。蔵書の内容は,嘉慶 13 (1808) 年阮元編の『天一閣書目』 (4094種) ,光緒 15 (89) 年薛福成編の『天一閣見存書目』 (2056種) などに記録されている。

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世界の観光地名がわかる事典 「天一閣」の解説

てんいちかく【天一閣】

中国の浙江(せっこう)省の寧波(ニンポー)に1561~1566年にかけて創建された、中国に現存する最古の書庫。アジアで最も古い図書館であり、世界に現存する三大家族図書館でもある。約8万冊を超える古書籍が収蔵され、地方誌と登科録(科挙の試験合格者名簿)は明代史研究の重要な資料といわれる。◇「宝書楼」とも呼ばれるが、1994年から寧波博物館と合併して、「天一閣博物館」になった。

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世界大百科事典(旧版)内の天一閣の言及

【地方志】より

…この趨勢を反映し,とくに20世紀に入って各国の図書館が争って地方志を集めるようになった。古くは寧波(ニンポー)の范氏天一閣が明代の地方志の収集で知られたが,現在は北京図書館に最も多く地方志が集まっている。日本では東京の東洋文庫が最も多く所蔵し,内閣文庫や天理図書館も優れた地方志を持ち,利用のための目録もほぼ完備している。…

【寧波】より

…今は近海漁業の基地となっている。近郊には天童寺,阿育王寺,保国寺等,古い伝統をもつ寺院があり,また市中には明の范欽の蔵書で名高い天一閣がある。【秋山 元秀】。…

※「天一閣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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