改訂新版 世界大百科事典 「天体命名法」の意味・わかりやすい解説
天体命名法 (てんたいめいめいほう)
新しく発見された天体の名まえのつけ方。すい星,小惑星,衛星,変光星,新星でそれぞれの命名法が決まっている。
すい星
新すい星は発見の通知が国際天文学連合(略称IAU)天文電報中央局に到着した順にその年号の後にa,b,c,……と続けて仮符号とし,発見者の名を3名まで連記して固有名とする。軌道が確定したのち,すい星を近日点通過の順にならべかえ,近日点通過の年号の後にⅠ,Ⅱ,Ⅲ,……と続けて確定番号とする。例えば,スズキ・サトウ・セキすい星=1970m=1970ⅩⅠは,1970年の13番目に報告が中央局にとどいたすい星で,発見者は鈴木,佐藤,関,小林,多胡の5人だが,はじめの3人の名がつき,近日点を1970年の11番目に通過したものである。
小惑星
発見報告がIAU小惑星中央局にとどくと暫定符号が与えられる。発見年号に続く第1英字は,1年の各月を16日を境に前後半に分け,1月A,B,2月C,D,……,11月V,W,12月X,Y(Iは使わない)として発見期日を表す。続く第2英字はその期間の発見順である。軌道が確定すると1801年発見の第1号小惑星ケレス以来の通し番号が登録番号となり,発見者には固有名称の命名権が与えられる。例えば2960番=1977DK3=Ohtakiは東京天文台木曾観測所で1977年2月後半に発見された小惑星で,登録番号2960番,“王滝”である。
衛星
母天体を火星M,木星J,土星S,天王星U,海王星N,冥王星Pとし,発見年とその年の発見順に番号をつけて,例えば1979J3と仮符号をつける。軌道が確定するとIAUの天体命名小委員会が協議して固有名を与える。木星の外側の衛星では,順行軌道のものはa,逆行軌道のものはeで終わる名をつける。
変光星
各星座の中で,発見順にR,S,T,……,Z,RR,RS,……,RZ,SS,ST,……,SZ,TT,……,TZ,……,ZZ,AA,AB,……,AZ,BB,……,BZ,CC,……,CZ,……,QZまでつけ(ただしJは使わない),次はV335,V336と続ける。
新星
発見年と星座名を続けて暫定的に呼ぶが,変光星の一種として取り扱われる。
電波源
強い電波源は存在する星座の後に発見順にA,B,C,……と続ける。また弱い電波源については掃天カタログの番号で示す場合とおおよその赤経,赤緯で表す方法がある。例えばはくちょう座A=19N4A=3C405=W57=CTA88,カシオペヤ座A=3C461=W81=CTA105である。
執筆者:冨田 弘一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報