太陽の周りを回る小天体。主に火星と木星の間にある小惑星帯に集まっているほか、木星の軌道上にも存在する。大きく成長しきれなかったものや、いったん成長したものの破壊されて破片となったものが起源とみられ、中には直径千キロ近くになる巨大な小惑星もある。46億年前に太陽系ができたころの痕跡が残っていると考えられ、「太陽系の化石」ともいわれる。探査機はやぶさ2が訪れた小惑星りゅうぐうには、生命に欠かせない水や炭素を含んだ鉱物があるとみられている。
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太陽系には八つの惑星以外にサイズの小さな天体が無数に存在する。そうした小天体のうち、周りにガスや塵(ちり)からなるハローをもたないものを小惑星という。小惑星の存在する領域は太陽系内に広く分布しているが、とくに火星と木星の間、2.1AU(天文単位)から3.3AUの帯状の領域に大多数の小惑星が存在する。その部分を小惑星帯とよぶ。
[松井孝典]
小惑星の存在が初めて世に知られたのは19世紀に入ってからである。1801年の元旦(がんたん)、イタリア、シチリア島パレルモ天文台のピアッツィによって最初の小惑星ケレスが発見された。それはティティウス‐ボーデの法則の予想する未知の惑星の位置(~2.8AU)に等しかった。1802年3月にはオルバースが第二の小惑星パラスを発見した。その後、引き続いて多くの小惑星が発見された。
1891年からはドイツの天文学者M・ウォルフによって写真を用いた小惑星の捜索が開始され、小惑星の発見率は飛躍的に高くなった。1994年6月までに軌道が確定し、登録された小惑星は6028番まである。
[松井孝典]
小惑星の離心率や軌道面傾斜角は惑星のそれに比べると一般的に大きい。離心率は0.1ぐらいから0.3ぐらいに分布し、軌道面傾斜角は30度ぐらいまで傾いている。小惑星帯には一様に小惑星が存在するわけではない。ところどころ小惑星の個数の少なくなっている領域が存在する。それを「カークウッドの空隙(くうげき)」とよぶ。これは、小惑星帯のすぐ外側を木星が運行しているため、木星の摂動(せつどう)効果を周期的に受ける軌道(木星の公転周期とその公転周期が整数比になる軌道)上の小惑星はそこからはじき飛ばされることによる。しかし、なかにはこうした木星の摂動効果にもかかわらずその軌道が安定な小惑星群も存在する。たとえば3.97AU(木星2公転間に小惑星は3公転する)には「ヒルダ群小惑星」が存在する。木星軌道上にも一群の小惑星が存在する。「トロヤ群小惑星」とよばれるこれらの小惑星は、木星と太陽を結ぶ線に対しその前後に60度離れた、ちょうど木星、太陽と正三角形の頂点をなす位置に存在している。そこは力学的に安定なことが証明されており、ラグランジュ点とよばれる。
小惑星帯の火星に近い側に位置する小惑星のなかには、その離心率が大きいため火星軌道の内側にまで入り込むものがある。アメリカ地質調査所のG・シューメーカーらはこうした小惑星群のことを、その代表的な小惑星の名をとって「アモール群小惑星」とよんでいる。地球軌道の内側にまで入り込む小惑星も知られている。それらは「アポロ群小惑星」とよばれる。ほとんどのものが小さく、直径1キロメートルぐらいであるが、なかには8キロメートルぐらいのものもある。アポロ群小惑星は、月を除くと、もっとも地球に接近する太陽系天体である。そのため隕石(いんせき)の母天体の有力な候補であると考えられている。小惑星探査の標的天体をアポロ群小惑星のなかから選ぼうと考えている惑星科学者も多い。そのためアポロ群小惑星の詳しい捜索が開始されている。そして毎年、新たに100メートルサイズのアポロ群小惑星が数個ずつ発見されている。
軌道長半径が地球より小さな小惑星群も存在する。1976年シューメーカーとヘリンはこれらを「アテン群小惑星」と分類した。木星軌道より外側にも小惑星が存在する。登録番号944のヒダルゴと2060のチロンである。これらは小惑星より彗星(すいせい)に近い軌道をもつ。
[松井孝典]
小惑星の軌道要素を分析すると、多くの小惑星が似たような軌道要素をもついくつかのグループに分けられることが知られている。各グループのことを族とよぶ。このことは1918年に日本の平山清次(せいじ)によって発見されたため、その名にちなんで「ヒラヤマ・ファミリー」とよばれる。近年の研究によると、ヒラヤマ・ファミリーに属する小惑星の相対速度分布は爆発した人工衛星の破片のそれによく似ていることが指摘されている。このことは、族(とくにテミス、エオス、コロニス)が衝突破壊によって生じた破片から構成されていることを示唆している。
小惑星の大きさと個数との間には、小さいものほどその個数が多くなるという関係がある。小惑星の直径をDとし、Dより大きい小惑星の個数をNとすると近似的にN∝D-2と表すことができる。これは岩石を破壊したときにみられる破片のサイズ分布と同じで、小惑星が破壊によって生じたことを示唆している。
[松井孝典]
多くの小惑星はその明るさが周期的に変化することが知られている。その理由は、小惑星の形が球対称でなく扁平であるためと考えられている。それ以外の理由としては半球ごとに明るさが異なるためとも考えられるが、そうした例は少ない。前者の場合、明るさの変化の2周期間の時間が自転周期に相当する。これまでに測定された小惑星の自転周期はそのほとんどが4~16時間の間に分布する。小惑星の形状は直径が500キロメートル以上のものを除くとほとんどのものが球から外れている。その理由は、小天体ほど天体中心での圧力が小さく、表面の形状のいびつさを自身の強度で支えることが可能なためと考えられている。
[松井孝典]
500個以上の小惑星に対して反射能のスペクトル分布が測定されている。それによると小惑星のスペクトル分布は各種の隕石(いんせき)のそれと対応づけられ、小惑星をそのスペクトル分布に基づいて分類することができる。E型はエンスタタイトコンドライトに似ていて、アルベド(反射能)も23%以上と高い。S型、M型はE型に比べるとアルベドが7~23%と低く、前者が普通コンドライト、後者が石鉄あるいは鉄隕石と似ている。C、P、D型はアルベドが2~7%と低く、C型は炭素質コンドライトに似ている。P、D型に対応する隕石は知られていないが、P型はスペクトルとしてはM型に似ていて、アルベドがより低い。D型は暗くて赤みがかり、有機物を含む表面の組成をもつのではないかと予想されている。スペクトル型に対応して軌道分布も異なる。たとえば、E型やS型は小惑星帯の火星寄りに分布のピークをもつのに対し、もっとも数の多いC型は木星寄りに多く分布する。
いくつかの小惑星は衛星をもつことが報告されている。しかしこのことは最終的に確認されたわけではない。
[松井孝典]
小惑星の起源については、まだ一般に広く認められている仮説は存在しない。しかし、微惑星の直接衝突を通じて惑星が形成される際、なんらかの理由で小惑星帯領域では合体成長よりも衝突破壊が卓越しておこったと、多くの惑星科学者は考えている。その理由の一つとして、鉄隕石のような衝突合体しやすいものの力学的性質が小惑星帯付近で大きく変化することがあげられている。
[松井孝典]
太陽系に属する無数の微小天体で,その大部分のものは軌道が火星と木星の間に収まっている。類似の微小天体としてはすい星があるが,すい星は外観的に輪郭が判然としていないこと,太陽に近づいたとき水蒸気およびほこりを主とする尾を生ずること,軌道的には軌道半長径,離心率および軌道傾斜が大きい値をとるものが多いことで区別される。小惑星は確固とした岩石の塊で太陽光を反射しており,気体を伴っている傾向はまったく見られない。大部分の小惑星は形状が岩石のかけらのように不規則であるので,自転によって地球に向ける面積が異なり明るさが周期的に変化する。変光の振幅は顕著なもので1.7等級に及び,変光の周期は3時間から9時間くらいの値をとるものが多い。このように小惑星の形状が不規則であることは,小惑星が原天体の破壊によって誕生したものであることを暗示している。
小惑星はその大きさが小さく暗いものが多いために,第1号のケレスが発見されたのは1801年1月1日であった。発見者はイタリアのパレルモ天文台のG.ピアッツィである。C.F.ガウスはこの観測データを用いて軌道を決定したが,その結果によると軌道は太陽から2.77天文単位の距離に位置することになり,これはボーデの法則により火星と木星の間に存在すると予想された惑星の位置(2.8天文単位)とぴったり一致するものであった。似たような位置にその後も発見が相次いだことから,昔ここに位置していた通常の大きさの惑星がなんらかの原因によって破壊され,さらにその後の相互の衝突によって今日のような小惑星帯ができたものと考えられていた。しかし一度誕生した惑星が破壊されるメカニズムが考えにくいこと,現在まで発見されている小惑星の全質量を加え合わせても地球の質量の0.0002倍にしかならないことなどから,むしろ太陽系ができ上がったとき,すでに10個か20個,あるいはそれ以上の数の小天体として誕生し,その中のいくつかはそのまま現在まで残り,ほかは衝突によって破壊され,無数の小惑星帯を作ったものであろうとする説が有力である。
同一の母惑星から生まれた小惑星は,今日では異なった軌道上を運行しているように見えるが,その固有離心率,固有傾斜を計算してみるとほぼ近い値をとっていることがわかる。このような起源の同じ小惑星の集りを族と呼んでいる。
族という概念を発見したのは日本の平山清次で,最初は族の数も五つ(テミス族,エオス族,コロニス族,マリア族,フローラ族)で,これに属する小惑星の数も少なかったが,最近ブラウアーD.Brouwerらがコンピューターを用いて研究した結果,さらに24の族が発見された。
小惑星を軌道の半長径の順に並べると,火星と木星の軌道の間の空間を一様に満たしているのではなく,あるところに集団を作って集まり,またあるところには空隙(くうげき)を作るという傾向がある。このような空隙は土星の環にも見られるもので,発見者の名にちなんでカークウッドの隙間(すきま)と呼ばれている。空隙をなす位置の小惑星の周期が木星の公転周期の1/2,1/3などに当たることから,木星の摂動による影響と考えられている。群は空隙の逆現象だが,木星と同じ周期をもつ群をトロヤ群,2/3の周期のものをヒルダ群と呼ぶ。なお,チューレは3/4の周期である。
小惑星は十分な数の確かな観測が集まり,信頼できる軌道要素が決定されると通し番号と名称が与えられる。名称をつける権利は通常発見者に与えられる。1900年3月6日平山信の発見した498番〈東京〉をはじめとして,77年まで日本人が発見した小惑星は16個に及び,〈三鷹〉〈箱根〉〈日光〉〈木曾〉などの名前がつけられている。小惑星の登録,軌道要素の管理は,長い間アメリカのシンシナティ天文台が担当していたが,最近スミソニアン天文台に移った。
太陽系の創成時から存在すると考えられている1番のケレスから4番のベスタまでは,比較的大きく形状も球形をしている(表1に1~4番の直径を示す)。大望遠鏡を用いて小惑星を系統的に掃天観測すればその数はほとんど無限に増加する。そういう意味で何km以上の直径をもつものを小惑星と呼び,それより小さいものを隕石,あるいは太陽系間物質と呼ぶかを定義することは困難である。表1のように1000kmというりっぱな大きさをもっているものから,1μm以下の宇宙塵に至るまで連続的に存在していると考えるのが妥当である。小惑星の大きさとその数について表2に示すような推定がなされている。
このように数の多い小惑星であるから,なかには特別にわれわれの興味を引くような特殊な性質をもつものが含まれており,これらは特異小惑星と呼ばれている。
執筆者:竹内 端夫
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(土佐誠 東北大学教授 / 2008年)
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※「小惑星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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