天神人形(読み)てんじんにんぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天神人形」の意味・わかりやすい解説

天神人形
てんじんにんぎょう

菅原道真(すがわらのみちざね)を祀(まつ)った天神信仰から生まれ、その姿をかたどった人形。土、木、練り物、張り子製などあり、全国各地に広く分布している。江戸時代、天神学問書道の神として寺子屋を中心に子供たちに親しまれ、正月や3月、5月の節供には、雛(ひな)天神としてこの人形が雛段に飾られ、山陰地方などには現在もその風習が残っている。節供前には天神市(いち)の立つ土地もある。

 さらに天神は農耕神としても広く信仰を集めた関係から、各地で郷土色に富んだ天神人形がつくられ、種類が多い。1917年(大正6)刊の『日本玩具(がんぐ)解説』に、「衣冠束帯(いかんそくたい)せる土焼の像なり。北野天神の祭神たる菅原道真に擬するより名づく。3、4歳以上の男女の用いるものとす。(略)徳川時代を通じて初等教育の学舎たりし寺子屋にては多く道真を文学の神として祀り、毎月其(その)忌日に子弟をして奉せしめたり。之(これ)より延(ひ)ゐて此(この)玩具を起こりしと認めらる」とある。

 形態内裏(だいり)雛に似て、端然と笏(しゃく)を持つ正座の座り天神が多く、そのほか立像、あるいは稲穂を手にした稲穂持ち天神(香川県高松市)、梅の枝を持つ梅持ち天神(京都市伏見(ふしみ)区)、堂内天神(青森県弘前(ひろさき)市)、以下、象乗り、牛乗り、亀(かめ)乗り天神などがある。山陰の出雲(いずも)地方に白天神、関東地方に鴻巣(こうのす)産練り物製の赤天神、ほかに黒衣の天神がある。

[斎藤良輔]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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