日本大百科全書(ニッポニカ) 「奥野信太郎」の意味・わかりやすい解説
奥野信太郎
おくのしんたろう
(1899―1968)
中国文学者、随筆家。東京の生まれ。陸軍軍人を父にもつ厳格な家庭に育ったが、陸軍士官学校をわざと落第、浅草オペラに入りびたるなどして、21歳、慶応義塾大学文学部予科に入る。与謝野晶子(よさのあきこ)門下の歌人でもあった。1948年(昭和23)より慶大教授。中国文学に独特の鋭い眼識をもっていたが、粋人肌の彼は論文というやぼな形式を好まず、もっぱら随筆を書いた。『随筆北京(ペキン)』(1940)、『柘榴(ざくろ)の庭』(1952)、『芸文おりおり草』(1958)その他多数がある。翻訳書としては『ちゃお・つう・ゆえ』(老舎作『趙子日』)など。
[村松 暎]