嫡子単独相続(読み)ちゃくしたんどくそうぞく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「嫡子単独相続」の意味・わかりやすい解説

嫡子単独相続
ちゃくしたんどくそうぞく

家督を相続するもの,すなわち嫡子が,所領を単独で相続する制度。中世成立期の武士階級は,惣領制による一族の所領の共同知行を原則としており,その所領相続も一族間の分割相続が行われていた。しかし,鎌倉時代中~末期になると,有力な庶子家が自立度を強めるとともに,農民層の成長,分業流通の発展に規定されて,在地に密着した地域支配が指向されはじめる。鎌倉幕府もまた,惣領制を維持しながらであるが,蒙古襲来などの契機を軸に,これら庶子家を把握する方向をとりはじめた。南北朝時代になると,たとえば備後山内首藤氏は元徳2 (1330) 年,安芸の熊谷氏は正平3=貞和4 (48) 年,同国竹原の小早川氏は正平 18=貞治2 (63) 年に嫡子単独相続となるといったように,一族による所領の分有と共同知行は放棄され,嫡子が所領を単独で知行するようになった。これに伴って,小さな庶子家の家督への家臣化の傾向がみられるようになり,家臣団構成が変化し,家督=嫡子の権力の強大化がはかられるようになる。また,これによって,女性財産権が否定され,化粧料という名目のわずかな土地などしか譲与されなくなり,女性の社会的地位の決定的な低下を招くにいたるのである。

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