家督(読み)カトク

デジタル大辞泉の解説

か‐とく【家督】

その家を継ぐべき子。あととり。嫡子。
相続すべきその家の財産・事業などの総体。跡目。「家督を譲る」
民法旧規定で、戸主の身分に備わる権利と義務。戸主の地位。
中世、一門・一族の長。棟梁(とうりょう)。
江戸時代、武士が、主君から与えられた封禄。跡式

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百科事典マイペディアの解説

家督【かとく】

古くは本家,分家を含む一門の首長をさし,戦いには一門の統率者として臨み,本家の嫡子が代々相続した。しかし室町以降,一門の団結がくずれるとともに,家督は各家の家長を意味するものとなり,さらに転じて,江戸時代には家産をさすものとなった。→家督相続
→関連項目家長

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世界大百科事典 第2版の解説

かとく【家督】


[中世]
 鎌倉時代以降,日本の封建制社会においてごく一般的に用いられていた用語であるが,南北朝時代の以前と以後とで,その意味はまったく異なる。鎌倉時代の例としては《吾妻鏡》の,秩父氏の家督を継ぐ河越重頼が,江戸氏をはじめ幾つかの武士団を統率したという表現をあげることができるが,この場合の家督は,秩父一門の族長のことであった。これに対して室町・戦国期の史料にみえる家督という語は,上のような一門一族のうちに成長してきた個々の家父長的家族(家)の統率者を指している。

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大辞林 第三版の解説

かとく【家督】

家を継ぐべき人。嫡子。あとつぎ。
戸主の地位。民法旧規定では、それに伴うすべての権利・義務を含める。 「 -を継ぐ」
中世、一門・一族の長。棟梁。
江戸時代、武士が主君から与えられた世襲の家禄。跡式。跡目。
遺産。家産。 「其の死跡に過分の金銀・-ありて/浮世草子・永代蔵 1

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

家督
かとく

家族を統督する者で、古くは一族の首長を意味した。室町時代には家を継いだ者、さらにはその相続した所領をも意味するようになった。
 平安時代の後半期に勃興(ぼっこう)した武人の間には血族的団結の風が強く行われた。この血族的団結は一族、一門、一流などとよばれたが、この一族の首長を家督とよんだ。当時、所領は生前に諸子に分与する慣習であったが、一族の所領を防衛するための組織がこの血族的集団であった。財産を分与された諸子はそれぞれ一家を創立したが、本家の家督の軍事的統率に服した。
 鎌倉幕府成立後は、幕府が御家人(ごけにん)を招集する場合には、その命令はまず家督に伝えられ、家督からその一族の輩(ともがら)に伝達され、家督は一族の輩を率いて出陣した。家督と一族の輩との関係は、所領の面からみれば、総領と庶子との関係、すなわち数人の子(庶子)に所領を分与しながら、そのなかの1子である嫡子に全所領を総領させる形態がとられていた。室町時代になると、財産の単独相続法が発達し、父の所領は嫡子1人が相続し、他の諸子はその扶助を受けるようになって、家督と一族の輩との関係は消滅し、家督は家を継いだ者を、さらにはその相続した所領をも意味することになった。
 江戸時代には、武士につき、死亡による相続を跡名相続(大名の場合は遺領相続)とよぶのに対し、隠居による相続を家督相続とよんだ。この場合の家督は封禄(ほうろく)の意味である。また庶民の間でも家産を家督と称した。なお、明治以降「家督相続」ということばは旧民法に残された。[石井良助]

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精選版 日本国語大辞典の解説

か‐とく【家督】

〘名〙
① 中世、一門、一族の首長のこと。棟梁(とうりょう)。一門の輩(やから)、家の子などに対する語。
※吾妻鏡‐嘉禎二年(1236)七月二四日「向後大番以下如此役。早可従一門家督之旨。今日重被之」
② 家を継ぐべき子。嫡子。惣領。あととり。家督相続人。
※吾妻鏡‐建久四年(1193)五月一六日「将軍家督若君始令鹿給」
③ 武士が主君から与えられた封祿。武士の家名と結合した世封世祿。跡式。遺領。跡目。遺跡。
※天草本平家(1592)一「キヨモリ catocu(カトク) ヲ ウケトラレテ ヨリ、ミギニ マウシタ ゴトク、イセイ、クライモ カタ ヲ ナラブル ヒト モ ゴザナカッタ」
④ 江戸時代、庶民間で家産、遺産のこと。相続財産。財産。
※集義和書(1676頃)八「孔門の学者は皆人々の本産あり。多くは日本の地士と云がごとくにて、古風の田地の家督あり」
⑤ 江戸時代、家督相続のこと。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※禁令考‐前集・第五・巻四七・寛文八年(1668)三月「家督又は嫁娶之時は伺、名主可受差図事」
⑥ 江戸時代、大名、旗本間で生前相続のこと。死後相続である遺跡に対する語。〔例書‐四(古事類苑・政治六三)〕
⑦ 旧民法で、戸主の身分に伴うあらゆる権利義務。戸主の地位。
※東京朝日新聞‐明治三八年(1905)七月二四日「新婚後幾許ならずして家督を末弟登氏に譲り」

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世界大百科事典内の家督の言及

【相続】より

…また,相続は,財産法上の地位の承継であって,身分法上の地位(たとえば,夫であること)には及ばない。明治民法では戸主の地位の承継としての家督相続が認められていたが,現行民法はそれを全廃したため,相続は純粋に財産法上の地位すなわち権利・義務の総体の承継となった。なお,財産法上の権利義務であっても,扶養請求権のような一身専属的な性質を有するものは除外される(民法896条但書)。…

【長子相続】より

…長子相続は,未開社会のなかでは父系的傾向のつよい社会,歴史的にはヨーロッパの封建社会に顕著にみられた。日本では姉家督(あねかとく)相続,選定相続,末子(まつし)相続などの他の伝統的相続形態に比べて,最も広く分布し一般的に行われてきた相続形態である。財産の相続にともなって家督(かとく)(家の代表者としての権限・地位)や先祖の祭祀権などを継承することが一般的である。…

【養子】より

…これらも本来は貴族の慣行とほぼ同じものであり,文書や説話集に実子に加えて養子をとったり,他姓の養子を得たりする例が武士・庶民ともに多くみられ,鎌倉幕府の法典である《御成敗式目》に,女性が養子を取ることを都鄙(とひ)に先例多きこととして積極的に肯定していることなどは,よくこれを裏書している。しかし,南北朝ごろを境に武士を中心に父系の家の継承が強い父権の下に確立されるようになると,養子はようやく家督継承の手段としての意味を強めるようになり,実子なき場合に限り,継子として設定されるという傾向が鮮明になっていった。しかし,父系親族組織が中国ほど強くならない日本では,以上の傾向にもかかわらず他姓を養子にとったり,女性が養子をとる慣行も容易には消えず,近世大奥の養子慣行にまでその影響が残った。…

※「家督」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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