子どもの幸福度(読み)こどものこうふくど(英語表記)child well-being in rich countries

日本大百科全書(ニッポニカ) 「子どもの幸福度」の意味・わかりやすい解説

子どもの幸福度
こどものこうふくど
child well-being in rich countries

国際児童基金(ユニセフ)のイノチェンティ研究所Innocenti Research Centre(所在地フィレンツェ)が調査、発表している先進国子どもが置かれている状況のランキング。各国の統計データなどから評価し、数値化したものである。当研究所のレポートカード(報告書)は、2000年から定期的に発行されているが、先進経済諸国において子どもの権利がどの程度保障されているか、各国の状況をモニターし比較することを目的としており、毎回違う視点で「子どもの幸福度」に影響を及ぼすさまざまな状況について考察が行われている。

 2013年発行のレポートカード11は「先進国における子どもの幸福度」と銘打たれ、この調査は、(1)物質的豊かさ、(2)健康と安全、(3)教育、(4)日常生活上のリスク、(5)住居と環境の5分野について、分野ごとに3~5、全部で20の指標によって幸福度を評価している。たとえば、「物質的豊かさ」では、子どもの(1)相対的貧困率、(2)貧困ギャップ、(3)剥奪(はくだつ)率(特定の物が欠除している割合)の三つが設定されている。この指標に基づき、世帯所得や子どもの所持品といった内容について評価し、数値化している。総合順位は5分野の平均順位から算出される。

 2013年4月発表の先進31か国の調査結果では、総合順位は1位オランダ、2位フィンランド、3位アイスランド、4位ノルウェー、5位スウェーデンと、北欧諸国が上位を占めた。日本についてはデータが不十分だったため、総合ランキングには加えられなかったが、日本の国立社会保障・人口問題研究所が不足していたデータのいくつかを提供して再集計を行った結果が、2013年(平成25)12月にレポートカード11の特別編集版として公表された。それによると、日本の総合順位は6位で、「教育」「日常生活上のリスク」の2分野では1位となった。しかし、「健康と安全」の分野では16位と低く、「物質的豊かさ」の分野では21位であった。「物質的豊かさ」の分野は、世帯所得や剥奪率に関する指標で、深刻な貧困状態に置かれている子どもが多いという結果になった。社会問題になっている「子どもの貧困問題」が、子どもの幸福度にも色濃く表れている。

 また、2020年発表のレポートカード16「子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形づくるものは何か」では、三つの分野(カッコ内は評価に用いられた指標)、「精神的幸福度(生活満足度・自殺率)」「身体的健康(子どもの死亡率・肥満率)」「スキル学力・社会的スキル)」で幸福度が測られた。38か国中の総合1位はオランダ、2位デンマーク、3位ノルウェーで、アメリカは36位、チリ最下位だった。日本は総合では20位。「身体的健康」で1位だったものの、「精神的幸福度」では最低レベルの37位だった。

 2022年発表のレポートカード17「場所と空間:環境と子どもの幸福度」では、大気汚染、水質汚濁、鉛などの有害物質、緑地、道路の安全、電子廃棄物の処理など9指標を用いて、子どもにとって健全な環境をどれだけ提供しているかを評価している。全39か国の総合順位1位はスペイン、2位アイルランド、3位ポルトガルで、アメリカは37位、ルーマニアが最下位、日本は13位だった。

[編集部 2022年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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