国民全体のうち、所得が低く経済的に貧しい状態にある人の割合を示す指標。貧困率には、国民ひとりひとりの所得を試算し、全国民を所得が高い順番に並べたとき、真ん中の人の所得の半分(貧困ライン)に満たない人の割合を示す相対的貧困率relative poverty rateと、生存に必要な最低限の収入を得られない人の割合を示す絶対的貧困率absolute poverty rateの2種類がある。このほか相対的貧困に該当する世帯の18歳未満の子どもの数を、子ども全体の数で割った「子どもの相対的貧困率」という指標もある。一般に貧困率は景気動向に左右されやすく、子どもの貧困率は、年金生活者を含む国民全体の貧困率より景気の影響を受けやすいとされる。日本で貧困率、子どもの貧困率という場合、相対的貧困率をさすことが多い。
経済協力開発機構(OECD)は相対的貧困率について「等価可処分所得(世帯全体の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した数値)の中央値の半分(貧困ライン)に達しない世帯員の割合」と定義し、この計算式に従って相対的貧困率が国際比較されることが多い。日本では2009年(平成21)に、厚生労働省が2006年時点の相対的貧困率を15.7%と初めて公表し、以後3年ごとに発表している。2018年時点で、日本の相対的貧困率は15.7%と、OECD加盟国の平均値(11.7%)を上回る。子どもの相対的貧困率は14.0%と、ほぼ7人に1人が貧困状態にあることを示しており、とくに母子家庭など「子どもがいる現役世帯のうち大人が1人」の場合の相対的貧困率は48.3%と高い。低所得家庭に育った子どもが満足な教育を受けられずに貧困に陥る「親から子への貧困の連鎖」が起きているとも分析されている。ただし、相対的貧困率はあくまで国民の所得の格差を示す指標であり、OECDの計算式の可処分所得には資産が含まれておらず、日本の経済実態を反映していないとの批判がある。
絶対的貧困率は、世界銀行が1970年代に提唱した概念で、生きていくうえで最低限必要な衣服費、食費、住居費、医療費、光熱費などをまかなえない人の割合を意味する。ただし、世界銀行が「1人1日1.9ドル未満で生活」と定義しているほか、40歳未満死亡率や成人非識字率を組み合わせた数値による定義などもあり、国・地域や国際機関によって基準がまちまちで、国際比較はむずかしい。
[編集部 2023年9月20日]
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2009年)
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