学力(読み)がくりょく(英語表記)achievement

翻訳|achievement

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

学力
がくりょく
achievement

学校教育などの学習や訓練によって獲得した知的適応能力。学力の程度は教育年齢 (何歳の平均に相当するか) ,学力偏差値 (〈個人の学力得点-平均学力得点〉÷学力得点の標準偏差) 百分率順位 ( 100 人中なら何位になるか) などで表現する。教育年齢の暦年齢に対する (教育指数) や精神年齢に対する比 (成熟指数) によって学童の診断や教育方法の改善に資する。学力を教科別あるいは要因別に段階評定 (プロフィール) し,個人の適性の判断や進路指導の参考に用いる。

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百科事典マイペディアの解説

学力【がくりょく】

一般的に,計画的な学習によって達成された能力,特に認識能力をいう。あるいは,学業成績として示される能力を示すこともある。ただし,学力に関して,一義的に定義づけられるような教育学的なコンセンサスは成立してはいない。それは,学力の概念が,人間観や発達観,教育観や学校観などと深い関わりを持ち,教育や学校に対する時代や社会の要求と相関して多様だからである。日本では,読み書き能力に加え,算盤(初歩的数的処理能力),すなわち英語のスリーアールズ(three R's:reading,writing,arithmetic)能力を,基礎学力ということもある。→学力テスト
→関連項目教育評価

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世界大百科事典 第2版の解説

がくりょく【学力】

学力低下,基礎学力,学力テストなどと〈学力〉を使う語は多いが,その明確な定義は困難であり,ふつう,やや漠然と,文化遺産の計画的な学習によって獲得した能力を指す。欧米にはこの語にそのまま当てはまる語はない。英語ではability(能力)にふくまれ,またachievement(達成,業績)は第2次世界大戦後,とくに高校入試のアチーブメント・テストとして日本語にとけ込むようになったが,学力と同じではない。

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大辞林 第三版の解説

がくりき【学力】

がくりょく(学力)」に同じ。 「眠い眼を睡ずして得た-を/浮雲 四迷

がくりょく【学力】

学校などにおける系統的な教育を通じて獲得した能力。教科内容を正しく理解し、それを知識として身につけ、その知識を応用して新しいものを創造する力。がくりき。 「基礎-」 「 -が低下する」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

学力
がくりょく

学力とは、学校教育によって系統的に伝達され、習得される知識・技能を中心として、子供のなかに形成される人間的能力のことをいう。すべての子供に人間的な人格発達を保証するような学力を形成していくことが、学校教育の課題である。[吉本 均・二宮 皓]

学力をめぐる論争の発端

学力の概念が教育学研究において意識的に問題とされたのは、第二次世界大戦後の1950年(昭和25)前後の、戦後新教育の是非をめぐる論争のなかであった。「読・書・算」の「基礎学力」の低下という事態について、経験主義に基づく新教育の推進者は、生活単元学習や問題解決学習を軸とした「問題解決能力」こそが新しい学力であり、学力は低下していないとした。他方、新教育の批判者は、知識の学習の軽視が「読・書・算」の学力を低下させたとし、知識や技能の取り立てての教育が必要であるとした。この論争は、「基礎学力」とは何かを問題としただけでなく、次代の担い手としての子供たちに何を伝えるべきかをも問題とした論争であった。[吉本 均・二宮 皓]

1960年代、指導要領改訂に伴う学力論の展開

次に学力が問題とされた時期は、1960年代前後の学習指導要領の改訂、全国一斉学力テストの実施という状況のなかであった。この時期の学力論議は、教科の研究・実践と結び付きつつ、学力の内部構造の究明に向かって展開された。当時の学力論の代表は、学力の中核に「態度」を据え、「生きた発展的な学力」を重視する名古屋大学教授広岡亮蔵(りょうぞう)(1908―95)の学力論と、学力をその計測可能性という点から限定的にとらえ、学校教育の固有の課題と任務を明確化しようとした東京大学教授勝田守一(しゅいち)(1908―69)の学力論である。[吉本 均・二宮 皓]

学力論の現代的課題

こうした学力論争の流れのなかで、1970年代から80年代には、学力を「成果が計測可能なもの」としてとらえることから、点数や偏差値を重視した「受験学力」「偏差値学力」の考え方が生まれ、受験競争の過熱化、「落ちこぼれ」という学力格差、そこから派生する青少年の非行などさまざまな教育問題を引き起こす要因として取り上げられるようになり、従来の学力観に対する修正と見直しが行われた。
 1996年(平成8)に出された第15期中央教育審議会第一次答申(「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」)において、「生きる力」の育成という教育課程の基本的目標から新たな学力観が提示されることとなった。この「生きる力」を支える新たな学力のとらえ方として、具体的には、(1)主体的思考力、問題発見・解決能力、(2)「豊かな人間性」に支えられた心の発達、(3)知識偏重の「偏差値的学力」から「総合的学力」へ、という3点を指摘することができる。また学力評価においても、これまでの「知識・理解」重視の評価から、「関心・意欲・態度」などの観点別評価を中心とする評価へと移行した。同時に、相対評価中心から、絶対評価を加味した相対評価へと評価システムも改革されてきた。しかし「生きる力」への学力観の転換に関して、再度、とりわけ大学生の基礎・基本学力の低下を危惧(きぐ)する声もあがっており、今後どのように新学力を育成するための条件整備が行われるかについては、課題が多く残されている。[吉本 均・二宮 皓]

学力の国際比較

ちなみに国際教育到達度評価学会(IEA)の数学や理科の第3回国際学力調査(1994~95)によると、日本の小学校4年生の算数は参加国26か国のなかで、シンガポール、韓国に次いで世界第3位であり、中学生の数学でも同様に第3位であり、依然として高い学力水準を示している。また理科の成績は、小学校4年生で韓国に次いで世界第2位、中学生でシンガポール、チェコ共和国に次いで世界第3位であった。理科はこれまで世界第1位の地位を維持してきたが、第3回調査では順位を下げている。日本の算数・数学の学力の特性は、計算技能は優れているが、数学的思考力においては点数がかならずしも高くないという点にあると指摘される。偏差値重視の受験学力競争の弊害がここにも現れているのかもしれない。
 IEAとは別に経済協力開発機構(OECD)加盟諸国においても、学力調査に関する関心が非常に高く、数学、理科および国語の学力調査が用意されており、日本も参加を果たしている。これらによりあらゆる側面から学力が調査されることが期待されている。また、イギリスやアメリカのみならず、日本でも学校の説明責任が求められ、個人の自由な学校選択を促進する政策が進むなかで、個別の学校の学力(成果)が測定され公表される時代がきており、学力論争に新たな視座を提供している。[吉本 均・二宮 皓]
『勝田守一著『能力と発達と学習』(1964・国土社) ▽広岡亮蔵著『教育学著作集1 学力論』(1968・明治図書出版) ▽永野重史著『子どもの学力とは何か』(1997・岩波書店) ▽苅谷剛彦著『変わるニッポンの大学――改革か迷走か』(1998・玉川大学出版部)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

がく‐りき【学力】

浮世草子日本永代蔵(1688)五「森嶋権六といふ男、すこしこびたる者にて、学力(ガクリキ)あれば道を忘れず」

がく‐りょく【学力】

〘名〙 学習することによって獲得した能力をいう。がくりき。
(イ) 学習を通じて獲得した知識、学問をしていくための知的能力。〔文明本節用集(室町中)〕
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉三「現在学力(ガクリョク)もさがったやうだ」 〔王令‐寄洪与権詩〕
(ロ) 学校の教科の授業を通じて獲得された能力。この場合には、図工、音楽、体育などの技術的・美的感受性などの能力も含まれる。
(ハ) 卒業にふさわしい能力。「高等学校卒業の学力」

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最新 心理学事典の解説

がくりょく
学力
academic achievement

学力は抽象的な概念であり,明確な定義はないが,「教育課程の目標に対する達成の程度」と暫定的に定義できよう。その理由は,学校教育法(第57条,第90条,第102条)においては,義務教育を超える段階の学校に入学できるのは「前段階の学校種の卒業もしくはこれと同等以上の学力があると認められた者」と規定されており,同法でいうところの学力が指し示すのは,当該学校段階の目標に対する達成の程度であるとみなせるからである。学校教育法(第30条第2項)では,小・中・高等学校においては「基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない」と規定されており,これら習得・活用・態度の三つをまとめて一般的に学力の三要素とよばれる。1998年告示の学習指導要領以降,小・中・高等学校の教育課程の目標とされてきている「生きる力」は,確かな学力,豊かな人間性,健やかな体の三つの構成要素からなり,それらのうち,確かな学力の指し示すものが学力の三要素と対応している。

 また,指導要録に示された評価の観点は各教科で異なるものの,学力の三要素に対応しながら,「関心・意欲・態度」,「思考・判断」,「表現・技能」,「知識・理解」の四つの観点の枠組みで記述されている。したがって,教科および活動ごとに独立した目標が立てられているのではなく,各教科と諸活動において学力の三要素を養いつつ,「生きる力」に収斂させていくのが理念とされているととらえられる。

【基礎学力】 学力の土台となる部分を基礎学力とよぶことがある。学校教育法では義務教育の目標としてさまざまな領域の基礎的な理解,能力,技能,知識を養うことが規定(第21条)されており,義務教育で養われるのはすべて基礎学力であるといえる。また,日常生活を営むうえで必要と考えられている読・書・算のいわゆるスリーアールズ3R'sといった特定の能力も基礎学力といえる。このように基礎学力の明確な定義は困難であるが,「後続して直面しうる教育目標の達成あるいは問題,課題の解決に必要な学力」とまとめられよう。

学力検査achievement test】 学力の程度を数量的あるいは段階的に把握するのが学力検査であり,学力テスト,学力調査ともいう。多くの場合,学力を測定しているとみなせる一定数の検査項目で構成され,検査結果は正答項目数に基づいた指標によって数値化され,別に定められた基準によって解釈される。

 学力検査を作成する手続きの中でも,一定以上の妥当性と信頼性を確保するための手順,および実施方法,採点方法を含む一連の手続きを標準化といい,この手続きを経て作成された学力検査のことを標準学力検査という。標準学力検査には,評価の観点別に目標を具体化した達成目標とそれに対する評価基準が設定され,全国的な基準による達成目標の到達度を知ることができる目標基準準拠検査(いわゆる絶対評価)と,得点が正規分布するように作成されており,受検者の学力の全国的な相対的位置を知ることができる集団基準準拠検査(いわゆる相対評価)の2種類がある。

 標準学力検査の対極に位置するのが教師作成検査である。これは教育目標や評価の観点の趣旨,実際の授業における具体的な教育目標の到達度を把握するために必要なだけの項目によって構成され,指導要録に記載する各教科の評価,評定を行なう際の主要な資料として用いられる。標準化されていないために標準学力検査と比べて劣るということはなく,実際に扱われた学習内容や実施された指導との関連性が高く,学習,指導の改善に直接的に利用しやすいという利点がある。

 いかなる学力検査であっても,利用できる項目の種類,実施や採点にかけられる時間などに制約があり,検査対象となる学力は限定的とならざるをえない。そのため,学力検査で測定できるのはつねに学力の一部分になりがちである。しかし,正誤が一義的に定まらない質的評価(ルーブリックなど)の方法を取り入れ,検査対象となる学力の範囲を広げる試みが広がりつつある。

 また学力検査は,上級学校への進学に必要な学力が備わっているかを数量的に記述し,進学希望者を選抜するためにも用いられる。選抜のための学力検査は,一度の受検が受検者の将来の進路に大きな影響を及ぼすため,ハイステイクステストhigh-stakes-testとよばれる。なお,既習事項に基づく出題ではなく,推論能力,興味等の適性の測定を目的とした検査を適性検査aptitude testとよび,学力検査と区別することがある。

【学力検査の国際比較】 国際的な学力調査としてよく知られているものに国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)と,OECDによる国際学習到達度調査(PISA)がある。TIMSSは4年生と8年生(日本では小4と中2)を対象に行なう調査であり,初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学,理科の到達度を国際的な尺度によって測定し,児童生徒の学習環境等との関係を明らかにすることを目的としている。PISAは義務教育修了段階の15歳児がもっている知識や技能を実生活のさまざまな場面でどれだけ活用できるかを,読解,数学的,科学的の三つのリテラシーliteracyに分けて調査を行なうものである。能力ではなくリテラシーとよぶのは,知識,技能,能力の幅の広さを表現するためである。これら三つのリテラシーの上位概念がキーコンピテンシーである。これはOECDの研究プロジェクト(DeSeCo)が定義した,社会や個人にとって価値のある結果をもたらし,さまざまな状況の重要な課題への適応を助け,特定の専門家だけでなくすべての個人にとって重要な能力を指している。すなわちキーコンピテンシーは,社会・文化的および技術的道具を相互作用的に活用する能力,多様な社会集団における人間関係形成能力,自律的に行動する能力の三つのカテゴリーから構成される。 →オーセンティック評価 →教育評価 →リテラシー
〔山森 光陽〕

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世界大百科事典内の学力の言及

【教育評価】より

… 今日,教育評価の研究は,歴史的にみて,教育測定運動の時代,進歩主義教育協会Progressive Education Associationなどの手によって展開されたその批判の時代とならんで,第3の転換の時代にある。それは,例えば学力評価に関しては,伝統的にその方法の中心になってきた〈相対評価〉,すなわちある一定の集団の中の相対的な位置によって個人の学力を評価する方法から,〈到達度評価〉,つまり最低限すべての子どもを到達させる教育目標を具体的,実体的に示して,この基準に従って到達の程度を評価する方法への転換である。また,学期や単元の終了時に行う総括的な評価とならんで,〈形成的評価〉――評価を学習活動が終了した時点で行うのではなく,学習過程の最中に,次の教授=学習活動が適切で有効に行われるように,修正の必要な部分を即座に把握するために行う評価――が重視されるようになった。…

※「学力」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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