日本大百科全書(ニッポニカ) 「子どもの貧困対策推進法」の意味・わかりやすい解説
子どもの貧困対策推進法
こどものひんこんたいさくすいしんほう
親から子への貧困の連鎖が起きないよう、子供の貧困対策を総合的に進めることを目的とする法律。超党派の議員立法として2013年(平成25)6月に成立し、2014年1月に施行された。正式名称は「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平成25年法律第64号)。「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備する」と明記されている。政府には就労、生活、教育面などでの支援の指針となる子供の貧困対策に関する大綱の作成と、実施状況の毎年の公表を義務づけた。また、都道府県には、子供の貧困対策計画を定めることを努力義務とした。同法を受け、政府は2014年8月に「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定。大綱では「貧困の世代間連鎖の解消と積極的な人材育成を目指す」との基本方針を掲げ、保護者の学び直し、親や子供の就労支援、ひとり親家庭への支援、奨学金の拡充、子供の相談にのるスクールソーシャルワーカーの増員、子供の学習支援、民間資金を活用した子供支援基金の創設など約40項目を重点政策とした。また貧困率、進学率、ひとり親家庭の親の就業率など25の指標を使って貧困問題が改善されているかどうかを検証することを打ち出した。
日本の子供(18歳未満)の貧困率は、1985年(昭和60)の10.9%から2012年に16.3%と大幅に悪化。経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進34か国中で9番目に高い数値である。とくにひとり親世帯の貧困率(2012年時点)は54.6%で、数字を公表しているOECD加盟33か国中でもっとも高い。このため、子どもの貧困対策推進法については、「子供の貧困対策に対する国の責務が明記された」ことを評価する声がある。一方で、本法や大綱には、貧困率や進学率などを改善する数値目標が盛り込まれておらず、市民団体や野党などからは実効性に疑問があるとの指摘も出ている。
[編集部 2016年2月17日]